「好きよキャプテン」キャプテン・レコード発足ギグ@新宿アルタ前


「笑っていいとも」でお馴染みの新宿アルタのちょうど反対側、新宿駅東口ステーション・スクエアに特設ステージがもうけられた。アルタとステージの間は、大きな緑地帯と歩行者天国となった6車線の道路、ステージ左右にも各1000?以上の広場がある。フィナーレにはこの空間がすべてストリート・ロック・ファンで埋まったのだ。観客約8千人。史上最大のロック・コンサートが出現した。
8月18日日曜。前号で告知した通り、キャプテン・レコード発足記念ギグ「好きよキャプテン」を本誌主催で行った。午前中から新宿駅構内から歌舞伎町一帯まで、パンクやニューウェーブ・ファッションの若者がかっぽしている。
午後一時。気温39度。宝島編集部員が入ったキリマンジャロスが、テーマ曲『好きよキャプテン』を演奏、と同時に広場全体がみるまに人波で埋まる。先陣は有頂天。先日のNHK『インディーズの来襲』でもユニークなキャラクターを見せつけたケラが、飛びはねながら『心の旅』を歌う。まもなく責任者は交番に呼ばれ、「地下街から広場まで通行人が歩けないので、至急対処するように」注意を受けた。
暑さを心配して15〜20分のインターバルをあけて進行し、続いて名古屋のツイン・ボーカル、ローズ・ジェット登場。バック・メンバーが都合で臨時編成のため2曲しか演奏できなかったが、スピード感ある近藤兄弟のパフォーマンスはアイドル性十分。客は増え続け約五千人にふくれあがる。
インターバルごとに、周囲のビルは一斉に避暑の群集であふれかえる。苦情三件。続いて実力派パパイヤ・パラノイア。着物を着ての派手なアクション。週刊誌が何社か狙いをつけて追う。女の子ファンからはかけ声もかかる。終わりは大拍手。
ハード・コアのガスタンクに、待ちかねたパンク・ファンがステージ前に殺到する。呪うようなバキのボーカルが、真夏の新宿ビル街にピッタリだ。ここで「音量が大きすぎる。このままだと電源を切る」と最終警告。PAを切って、ほとんど生音。ポゴ・ダンスがきれいに波うつ。
キャーは、ポップでかわいらしいガールズ・グループだ。キャー・ファッションの女の子ファンもかなりいる。ストリート・ロックは都会のエスニック(民族)音楽。ちょっとナーバスで、どこかめちゃめちゃポップだ。
次いで、コブラ。宝島カセット・ブック「ザ・パンクス」でもおなじみ。観客からはオイの掛け声がかかり、合唱もきこえるほど盛り上がる。このころ日も暮れ、いよいよ7千人を突破。加速度的に人が増える。
テントで作った控え室には、マスコミの取材陣、スタッフ、関係者がごったがえす。ラフィン・ノーズのチャーミーや、町田町蔵なども顔を見せる。お祭り気分だ。
いよいよラスト。紀伊国屋の前から山手線のガードまでステージが見えるあらゆる場所に人があふれた。「こりゃ、24時間TVで一万人が集まって以来だね」このスペースを管理する代理店の人があっけにとられた。スモークがあがりウイラード登場。ストレートなロックは、パンク、ビート、メタルなどのジャンルを越えて、客を動かす。緑地帯から、地下鉄出口の屋根まで、あらゆるところが人で埋まった。もちろん禁止区域だったけどね。
新しいストリート・ロック。既成のすべてのシステムとは、まったく別な世界を作る、新しい何かが動き始めている。(『宝島』1985年10月号)

♪「STINKY VICE」「OUTLAW」