真矢が駄目ならファンキー末吉でいいではないか(ルックス以外)
先日、日帰り出張にて、片道170キロの山越えドライブ(別に望んだわけじゃない)。こんなときは車中でCDをガンガンにかけるしかない。
ということで復活アルバムの発売まであと1ヶ月を切ったDEAD ENDをディスコグラフ順にガンガンにかけたでござるの巻*1。
1st album『DEAD LINE』(1986年6月発売)
01.Spider in The Brain
- アーティスト: DEAD END
- 出版社/メーカー: SMD
- 発売日: 2009/11/11
- メディア: CD
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02.Frenzy
03.Back in The Shadows
04.The Awakening
05.Sacrifice of The Vision
06.Definitive Urge
07.Perfume of Violence
08.Beyond The Reincarnation
※07のみCOOL JOE、それ以外はTAKAHIRO作曲(CDのみボーナス・トラック)
09.Replica
10.Worst Song
このバンドを語るにおいてはまず、大塚”MORRIE”基之のことから。端整で麗しく陰影の深い歌声と、野獣の叫び/または老婆の呪いのように引き裂き食いちぎる叫び、言わば【人間態】と【異形態】の2つの対極的なボーカルスタイルを操る、通称”暗黒王子”、”魔界のプリンス”、”関西弁のカリスマ”。
このアルバムでは【異形態】のスタイルの割合が9割だけど、ときおり挿入される【人間態】のスタイルが強い印象を与え、結果トータルで”上手/下手”という次元を超えて”このボーカルは凄い!”という印象を否応なしに聴き手に刻み付ける。歌詞の世界も、それまでのHR/HMの歌詞の多くが、横文字を多用したり”嵐”とか”鎖”とかのストリートっぽい単語をちりばめることで歌謡曲くささを廃しようと涙ぐましい努力をしていたところに、アルバムの初っ端から「泣き叫ぶ鬼の串刺し 何かに憑かれた餓鬼の群れ」ですよ!歌謡曲離れどころか現世を離れて、ぶっちぎりで独自の世界観を確立しています。
一方、バック(ギター)の音はどうかというと、改めて聴き返してみると意外にも、ボーカルスタイルほどには凶悪に歪んだり尖ったりはしておらず、音の粒がそろってこじんまりと聴きやすい音色だと思う。ボーカルがなければポップなJロックとも言っていいくらい。 このアルバムのギターはレコーディング当初はオリジナルメンバーの香川”TAKAHIRO”孝博だったけど、制作途中に脱退(クビ*2という説が一般的)し、当時別バンドに所属していた足立”YOU”祐二が無理やりレコーディングに参加することに*3なり、そのあたりの事情もギターのおとなしさにあるのかも。
その意味では、ギターの歪み/尖り具合といえば、アルバムのCD化においてボーナス収録されている『REPLICA / WORST SONG』のほうがHR/HMの音としては正統派。
『REPLICA』は”MORRIE”の【人間態】ボーカルのピッチが少々あやしい状態になっているが、名曲。後年ガーゴイルもカバー。
2nd album『GHOST OF ROMANCE 』(1987年9月8日発売)
01.DANSE MACABRE
- アーティスト: DEAD END
- 出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント
- 発売日: 2009/11/11
- メディア: CD
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02.THE DAMNED THING
03.PHANTOM NATION
04.THE GODSEND
05.DECOY
06.THE RED MOON CALLS INSANITY
07.DEAD MAN'S ROCK
08.SKELETON CIRCUS
09.SONG OF A LUNATIC※05のみCOOL JOE、03・04・07はMORRIE、それ以外はYOU作曲
ビクターからのメジャーデビュー作。デビュー直前にドラムの田野”TANO”勝が健康上の理由により脱退*4。サーベルタイガー(横須賀ではなく本家札幌のほう)に所属していた湊”MINATO”雅史がオーディションにより加入。ボーカルも音づくりも基本的には『DEAD LINE』の延長上であり、アレンジや誌世界においていくつかの前作をモチーフとしたと感じられる部分あり。
ただし本格的に曲及び音作りを任されるようになったYOUちゃんのギターはいわゆる【泣きのギター】スタイルが開花。このアルバムの頃が、レコーディング作品での完成度とライブでの演奏力のバランスが最も取れていた時代であると思われる。MORRIEのボーカルは【人間態】と【異形態】のバランスは半々、といったところ。
3rd album『SHAMBARA』 (1988年5月21日発売)
01.Embryo Burning
- アーティスト: DEAD END
- 出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント
- 発売日: 2009/11/11
- メディア: CD
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02.Junk
03.Night Song
04.Serpent Silver
05.Psychomania
06.Luna Madness
07.Blind Boy Project
08.Blood Music
09.Heaven
10.I Can Hear The Rain
※03のみCOOL JOE、それ以外はYOU作曲
この頃の日本のロックシーンはブルハやジュンスカ等のコピーしやすい”ビートパンク”が主流で、HR/HMのバンドが幅を利かせていた『ロッキンf』もデランジェやZI:KILLといった新しいスタイルのバンド(当時はまだビジュアル系という言葉はなく、苦し紛れに”ポジティブ・メタル”という無理やりな括り言葉で彼らは表現されていた。ほんの一時だけど)、そしてXが次第に脚光を浴び始めていた。
そんな中で岡野ハジメがプロデューサーとなった本作は、【ボイストレーニングによるボーカル強化】すなわち【人間態】での魔力発揮が可能となったボーカルの格段のパワーアップ、【懲りまくった濃密なアレンジ+多重録音】によって、前作の延長線どころかそれまでのイメージと異なる次元の”問題作”となり、ファンの度肝を抜くこととなった。冒頭の『EMBRYO BURNING』のイントロから、リスナーの”耳に入る”音ではなくてリスナーを”異世界に放り込む”重厚な音世界。麗しく圧倒的な歌唱力にて「夢見る魔人の子/狂おしいイリュージョン/胎児の抱擁」と魔界を手中に収めたようなボーカル。激しいYOUちゃんのギターソロに正面から対抗するMINATOのタムまわし、そのバックで黒く響き続ける増本”CRAZY COOL JOE”正志のベースライン。あまり好きな言葉ではないけど、”時代を感じさせない”アルバムですよ。 バンド結成からのオリジナルメンバーであるCRAZY COOL JOEは、テクニカルでカリスマ的な他のメンバーと比較するとやや地味な扱いとなってしまうのだけど、見た目が充分にグラマラスでロックンロール!なベースマン。彼が唯一このアルバムで曲を書いている『NIGHT SONG』の疾走感はものすごく格好よくて、当時何度もリピートして聴いたよ。
このアルバムの完成度/重厚度が、多くのリスナーやフォロアーを生んだ”功”とすると、その”罪”は、その完成度ゆえに音世界をライブで再現ができなかったこと、だと思う。
実際にライブに行ったことがないので偏見かもしれないけれど、当時の彼らのライブ評にて”沈黙する客席”という表現をよく目にしたのは、彼らのカリスマ性に言葉を無くしたファンより、アルバムでの音世界と目の前の等身大の彼らとのギャップに戸惑うファン、のことを表した表現の気がするのよ、少なくとも当時の映像を見ると。
アルバム本体の話に戻ると、前述の『EMBRYO BURNING』や、「ばらばらの肉体が宙ぶらりんになり/ざんばら髪の女が破裂する/めくら撃ち」(『JUNK』)、「月明かりを背に受けて/少女と悪魔の大地を踏みしめ/肉のざわめきを暗示する/ソドムの夜へともうすぐ帰る」(『LUNA MADNESS』)等、魑魅魍魎の魔界描写極まる一方で、呪符を一切排した『HEAVEN』を唄うようになったMORRIEの内面世界の変化は、既に次のステージに向けられた変化のはじまりだった。
1st single『BLUE VICES』(1988年12月16日発売)※再発盤の『SHAMBARA』にボーナストラックとして収録
01.BLUE VICES
02.WIRE DANCER
『SHAMBARA』と同じく岡野ハジメによるプロデュース、しかしまたも異なる方向へと進んだシングル曲。シンセギターと言ってもいいタッピング奏法による一定パターンのリフレイン、ドラムもベースもシンプル極まりない。「テクノロジー」「未来のアダムとイブ」「メトロポリス」「天国行きモード」などをキーワードに、デジタル世界の黙示録をやや高めのキーで唄うボーカル。メンバー4人の声・楽器の像がくっきりと浮き上がり、緊張感たっぷりの音世界。 現時点では彼らの歴代の音の中でいちばん好きなのはこの曲。
1989年3月、雑誌・宝島が主催した”クラブ・ワンダーランド ロック東京コレクション”という1週間の日替わりロックイベント@クラブチッタ川崎において、DEAD ENDはメジャーアルバム『BLUE BLOOD』発売直前のXと同じ日に対バン公演。そのライブでは『DEAD LINE』の全曲が披露された。それは、次のアルバムに向けての過去との決別を意味していたのかもしれない。
4th album『ZERO』 (1989年9月21日発売)
01.I WANT YOUR LOVE
- アーティスト: DEAD END
- 出版社/メーカー: BMGビクター
- 発売日: 1995/05/24
- メディア: CD
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02.SLEEP IN THE SKY
03.BABY BLUE
04.SO SWEET SO LONLY
05.CRASH 49
06.TRICKSTER
07.HYPER DESIRE
08.PROMISEDLAND
09.I SPY
10.I'M IN A COMA
11.SERAFINE
02・07はMORRIE、01・05はMORRIE+岡野ハジメ、04はYOU+MORRIE+岡野ハジメ、それ以外はYOU作曲
BMGビクターに移籍、3度目の岡野ハジメ プロデュース作品。そしてまたしても”問題作”。シンプルなパターンのギター/リズムフレーズがくり返される音づくりと、力の抜けたボーカル。やっていることは『BLUE VICES』と同じ路線なのに、ボーカルにも演奏にも全編、銭湯でレコーディングしたようなエコーがかかっているため聴いていて全く緊張感もなく、”時間がなくて手を抜いたアルバムかぁ?”と思ってしまうほど。発売当時(高校生のころ)は”うわーかっこいー”と何度も聴いたアルバムなのに、今聴くと全然印象違うなぁ…
ただしこのアルバムは間違いなく、その後の虹やら涙やら多くの”V系”の音作りの原点である。
3rd single『GOOD MORNING SATELLITE』 (1990年4月21日発売)
『ZERO』のもっさり感から一転、クリアでスリリングな音世界再び。ディレイフレーズが繰り替えされるバッキングと対照的に、ギュオンギュオンと切り込むリード。カップリングの『原始のかけら』はMorrieのソロ作の匂いのほうが強い。
5th album『METAMORPHOSIS』 (2009年11月11日発売)
01.摩天楼ゲーム
- アーティスト: DEAD END
- 出版社/メーカー: SMD
- 発売日: 2009/11/11
- メディア: CD
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02.Dress Burning
03.テレパシー
04.Devil Sleep
05.神猿
06.擬似ヴィーナス
07.Princess
08.Guillotine
09.Kill Me Baby
10.冥合
20年ぶり!の復活アルバムに先駆けての【JACK IN THE BOX 2009】、行けなかったけど某所にて『Psychomania』の音源は聴けた。感想としては、”MORRIE、声出てないんじゃね?”というちょいネガな印象が。激しく高音域でシャウティングするスタイルから中低域を響かせるスタイルへの変遷は解散前までの流れの中で既に見られていたし、クリ×2の『Light&Lust』では括弧たるスタイルとして”内向きにビブラートする低音唱法”が主体となっている。それを違和感なく受け入れられるかどうかがこのアルバムに対しての評価の分かれ目かもしれない。
まずは聴かなければ。それからまた詳しく感想をまとめます。