1986.12 12inch single『RUN "CINDY" RUN』


RUN "CINDY" RUN
メーカー:東芝EMI
価格:¥980

  1. SIDE A :
  2. Run "CINDY" Run
  3. SIDE B :
  4. Christmas Raid
  5. What A Sad Story


音    楽    で
気          が
狂 っ た こ と が
あ り ま す か ?



呆然と立ちつくす。狂ったように踊る。客席は狂気に包まれる。そして、その視界には笑いながらもオーディエンスを手玉に取る4人のトリック・スター達が常にいる。ウィラードを体験することは今まで閉じていた、あなたの中の扉を開けることかもしれません。

「初めて、頭の中で鳴っていった通りの音になった」そうリーダーであるJUNが言う通り、彼らの大きな成長をこの12インチ・シングルは示している。そしてファンへの大いなる感謝をこめて価格も\980に押えられた。A面はバイオリン、同期モノを導入した、スケール感のあるナンバー。B面はハードでスピィーディなお得意なスタイルと氷のようにクールでシャープな手触りのナンバー。新たなロックの地平を目指す、彼等のマニフェストを是非とも受けとめて欲しい。

♪『RUN "CINDY" RUN』

先の「ニューサウンズスペシャル」を聴いた中学二年生が自分の金で初めて買ったレコード*1。タイトル曲の太くうねるリズムにバイオリンが乗っかるあたりに「なんてクールなんだ!」と興奮したものです。B-1の疾走感*2、B-2の寂寥感も、(ライブ音源とは違う)緻密な音構成にゾクゾク。

上記のイメージは雑誌での見開き広告だけど、JUNを除いた3人の”素”の若武者っぷり!KLANのアイドルっぷり!コピー文面ではカルトっぽさを出しつつもビジュアル面では胸キュンを狙うというツンデレ作戦。パンクに限定されていた従来の限界ファン層を、日ごろロックを聴かないようなイタイケな文学少年少女にまで広げようとするイメージ戦略が垣間見える。─まぁ自分がそれに乗ってしまったと言えるわけだけど。

プロデュースはメジャーデビュー作から引き続き岡野ハジメ。前作までの、晴れない霧の中で演奏しているような音のもっさり感がクリアになって、特にJUNのボーカルが”自信に溢れた”ものに聴こえる。上記の宣伝文や当時のインタビューでも「頭の中に描いていたイメージを実際に音にできた自信作」と言うだけあって、現在もライブの定番曲であり彼らのEMI時代の彼らの代表曲と言える*3



「タイトル曲は『タイムズ・スクエア('80)』という映画からインスパイアされました。特に主人公がゴミ袋をバッグ代わりに持ち歩くのは自分の中でも流行ました(ワラ)」というのはJUNのコメントとして比較的有名(だと思う)だけど、ウィファンでこの映画を観て元ネタを確認した人はどれだけいるのか?(…俺も観たことない。) キャスト・スタッフもマイナー(当時は)、日本はもとより本国アメリカでも大ヒットしたわけではなく日本でのDVDも廃盤。基本的なデータはこちらを参照するとして、特徴としてはこんな感じ。

  • 閉塞した世の中に辟易したティーンの女の子二人がロックナンバーを通じて社会に反抗する。ちなみに彼女達を支援するラジオDJはティム・カーリー。(クレジットは彼がトップ)
  • ゴミ袋をファッションとして身につける彼女らは”Sleaze Sisters(ガラクタ姉妹)”とメディアから名付けられる。”Sleaze”という単語は歌詞にも登場。
  • 主人公二人の名前はニッキーとパメラ。…”シンデイ”ではない。

80年代に多く作られた”ポップな青春ムービー”として捉えると、戦争映画や西部劇映画が好き(と思われる)JUNの趣味とはややかけ離れた印象もあるのだけど、監督のアラン・モイルはその後も『今夜はトーク・ハード('90)』『エンパイア・レコード('95)』といった、【音楽を通じて社会に対する自我を貫く】映画を撮り続ける*4人で、その辺りのパンクなマインドがJUNにも響いたのかな。

映画『タイムズ・スクエア』予告編

※本篇はここから観れます(字幕ないけど)

タイムズ・スクエア [DVD]

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当時少しずつ増えだした12インチ・シングルという形態での標準価格【1,200円】を【980円】で発売するというメジャーならではの戦略は果たしてヒットに貢献したのかな? ジャケットはツルツルしたボール紙ではなくザラ紙の2色刷り、インナーは無くて歌詞は裏ジャケットに印刷されており、通常の12インチ・シングルよりも少しショボイ*5。彼らをもっとカルトっぱく売るのであれば低価格戦略ではなくて通常価格でもBOX入りにしてPVのVHSを付けるとかの高付加価値戦略を取るべきだったろうに…メジャーデビュー作が思ったほどセールスが上がらなかった会社側の焦り?

各音源の現状ですが、

  • 『Run "CINDY" Run』…EMI時代のベスト盤『GONE WITH THE WIND(CDまたはLP盤)』『Rabbish Stories Happend』に収録
  • 『Christmas Raid』…『GONE WITH THE WIND(LP盤)』『『Rabbish Stories Happend』に収録
  • 『What A Sad Story』…『GONE WITH THE WIND(CD盤)』に収録

…要するに、アナログプレイヤーをお持ちの方が12インチを中古でゲットするか、廃盤CDをくそ高い値段でオクや中古ショップでゲットするか、東京のジャニスにCDをレンタルしに行くか、何らかの特殊な手段でなければ聴けません。
しかも『Christmas Raid』と『What A Sad Story』が別々の音源に収録されているので、2つの曲を柱時計の振り子の音がブリッジするという格好よさが意味を成さなくなっています。…EMI!

*1:ただし”初めて買ったアルバム”はこちら

*2:思い切りパンクな(笑)歌詞も、当時の中学2年生にとっては斬新で衝撃的だった。でも宝島の「JUNはシャレで書いたものと思われる」と冷めた視線でのレビューで「え、そうなの?」とショック(苦笑)

*3:”デビュー曲”って普通はアーティストにとって思いいれがあるもんだと思うけど、LIGHTNING SCARLET』ってJUNの中でどんな位置づけなんだろう?あのPV含めて黒歴史なのかなぁ…近年のライブでも演奏された記憶はないし。

*4:でもどちらも未見なのであまり知ったようなことは書けない

*5:レコード盤中央のレーベルはA面とB面とも彼ららしいデザインで、そこだけがコダワリか。