どこにあるのかJUSTICE
25周年ライブ?まであと1月ちょい。だからというわけでもないけど、ようつべでデビュー当時のテレビ映像をダウンロードして携帯にデータをぶちこんで通勤中に鑑賞している今日この頃。
インディー時代に続いて東芝EMI時代の彼らの音にコメントして自分の中でケリをつけたい気持ちがあるのですが、どうしてもこのアイテムについて触れざるを得ない。
INDIES
アーティスト:THE WILLARD
規格:LP(後にCD化)
メーカー:インディペンデント・レーベル
発売日:1986/8/30
曲目
(LP収録曲)
- STINKY VICE
- URBAN"BAT"SURVIVIOR
- OUTLAW
- VANGUARD
- THE END
- CONGRATULATION(VAIN FOR YOU)
- HIT OR MISS
1〜3 Taken from 『OUTLAW』(1984.06)
4〜5 Taken from 『VANGUARD』(1985.06)
6〜7 Taken from 『CONGRATULATION』(1985.07)
(付属EP『KLAN』収録曲)
- THE NIGHT BEFORE
- THROUGH THE LOVE
「過去にわけのわからないベストが出されたことがあったんです。それって自分たちとしては不本意なんですよ。半ば強奪同然にテープを持っていかれて、ジャケットだって意味不明だし、それって中に入っている音源を馬鹿にしてるというのがあるしね。」(『INDIES』に関するJUNのコメント、『GONE WITH THE WIND』発売時インタビュー、『DOLL』1989年6月号)
JUN本人が認める(笑)”インディ時代の非公式シングル・ベスト”としてファンの間でも認知度は高く、かつCDは現在プレミア化している問題のアイテム。
初回リリース時には、発売元のクレジットとして”インディペンデント・レーベル”という謎のレコード会社名が表記されており、裏ジャケットには、実施には曲が収録されていない『L.C.D.D』と『PUNX SING A GLORIA』のジャケット写真が、それ以後のEPのジャケ写と並んでさも収録されているかのようにデザインされている胡散くささ。しかし、収録曲はいずれも発売と同時にSold Outとなった3枚のシングルの音源7曲、そして本邦初公開音源!のKLANヴォーカルのSOLOシングル2曲。ファンにとっては、いくらJUNがご立腹でも味わってみたい禁断の果実のようなもので、LPは発売当時のインディーズチャートを圧倒。後にクラウンレコード系の"VICE"レーベルから再発されたCD盤はオークションでも常に定価の数倍の値段で取引されている*1。
ところで、このアイテムにメインで収められている3枚のシングルは全て、「BOXレコード」(住所表記は神奈川県伊勢原市)*2が発売元であるが、関連する出来事を「BOXレコード」に関して整理すると、このアイテムの裏側が、うっすらと見えてくる。
- 84.4 シングル『OUTLAW』をBOXレコードよりリリース
- 85.6 シングル『VANGUARD』をBOXレコードよりリリース
- 85.7 ライブにてシングル『CONGRATULATION』を配布。”CAMOUFLAGE RECORDS”とクレジットされているが、録音はBOXレコード所有の”BOXスタジオ”にて行われている。
- 85.9 アルバム『Good Evening Wonderfull Fiend』発売。収録されている『VANGUARD』と『VAIN FOR YOU(Congratulation) 』は上記の2アイテムと同じ音源を用いている。
- 86.1(推測) 東芝EMIと契約。
- 86.1.10 『宝島』2月号上のBOXレコードの広告に、”KLAN Soloシングル1月25日発売”、”ウィラードのX'mas Singleはバンドの都合で中止となりましたが、New Singleは近日中に発売します”という告知が掲載される。
- 86.2.10 『宝島』3月号上のBOXレコードの広告に”お詫び”としてウィラードNew SingleとKLAN Soloシングルの発売中止の告知が掲載される。「予約者には特典をつけて現金を返却しております。今後の彼等の活躍に期待しましょう!!」という文章つき。
- 86.5 12インチEP『WILL』キャプテンより発売。たちまち全国のインディー売上チャートの首位を維持。
- 86.7.23 メジャーデビューシングル『LIGHTNING SCARLET』東芝EMIより発売。
- 86.8.10 『宝島』9月号上のUKエジソン、キャプテンレコードの広告に『INDIES』の発売告知が掲載される。キャプテンレコードはその後も数回紙面広告に『INDIES』の告知を出すが、あくまで”インディペンデント・レーベルという会社が発売したLPを販売している”というスタンスを保つ。
- 86.8.30 LP『INDIES』インディペンデント・レーベルから発売。たちまち全国のインディー売上チャートの首位を維持。
- 86.9.3 アルバム『Who sings a Gloria?』発売
- 87年 日本クラウン系列の「VICE」より、『INDIES』『WILL』再発(いずれも後にCD化)
上の流れから推測すると、BOXレコードとバンドの関係はキャプテンから『G.E.W.F』発売後も良好ではあったが、『G.E.W.F』の大ヒットやメジャーとの契約によりその関係に横槍が入り、リリース予定作品の中止、レコーディングされていた作品の音源の強奪(に近い権利の移行)があったことが伺える。その横槍/強奪の首謀者(”インディペンデント・レーベル”なる発売者の正体)は今だ明らかにはされていないが、『Who sings a Gloria?』において「略奪の限りを尽くし落とした数を誇る 手に入れた物を売りさばけ My Captatin is Everytime Happy」とJUNに辛辣に唄われている某社が限りなく”黒”に近い。
”インディーズ御三家”(死語)の他の2バンド:有頂天(ナゴムレコード)、ラフィン(AAレコード)はいずれも自らが主催するインディレーベルより作品をリリースしていたが、ウィラードに関してはアイテムの発売・販売を外部のレコード会社(BOX、そしてキャプテン)に委託する、という形態により作品作りに集中するスタイルを保っていた。だがそれは同時に、自らが作成した音源の権利を掌握することができず、この『INDIES』のように本人たちのコントロールできないところで作品が一人歩きする(=バンド外の誰かが売上利益を吸い上げる)結果となってしまった。そしてそのゴタゴタを回収すべく、本人(JUN)は89年のベスト盤『GONE WITH THE WIND』に『L.C.D.D]』と『PUNX SING A GLORIA]』を含む、インディー時代の主要曲を収録するが、そこには『OUTLAW』『STINKY VICE』のオリジナル音源は収録されていない。そして『GONE WITH THE WIND』も『INDIES』と同様、現在は廃盤であり、稀少なCDが中古市場で高値を呼んでいる状態である。
*1:私はCDの発売当時に購入してその10数年後にヤフオクで定価出品して高額でお買い上げ頂きました。ありがたや。ちなみに御茶ノ水のジャニスに行けば『INDIES』も『GONE WITH THE WIND』も普通にCDレンタルできますよ、念のため。
*2:手元にある当時の『宝島』上の同社の紙面広告を見ると、ポップス寄りのアーティスト・バンドをメインで扱う中でウィラードは異質な存在として少し浮いている。