ライフ・イズ・ミラクル

【解説】(allcinema ONLINEより) 
寓意を多用し、自由奔放にしてオリジナリティ溢れる語り口で多くの支持を集めるヨーロッパを代表する巨匠、「アンダーグラウンド」「黒猫・白猫」のエミール・クストリッツァ監督が、実際に捕虜の女性と恋に落ちた男性の物語をヒントに描く切なくも心温まるヒューマン・ラブ・ストーリー。紛争下のボスニアを舞台に、敵方捕虜と恋に落ちた主人公が、反対に敵の捕虜となってしまった自分の家族との交換を迫られ苦悩する姿を、ユーモアを交え、不条理に満ちた人生の中に喜びと希望を見出していく作劇で力強くエネルギッシュに描き出していく。
 1992年、セルビアとの国境にほど近いボスニアの片田舎。セルビア人のルカはこの村に鉄道を敷くためやって来た技師。家族や仲間たちとともにのんびりした日々を送っていた。ところが、サッカー選手を目指していた息子ミロシュは突然軍に招集され、おまけに妻まで別の男と駆け落ちしてしまう。一人きりとなってしまったルカ。それからすぐに内戦が勃発、やがてミロシュが捕虜になったとの報せが届く。数日後、ムスリム人の看護師サバーハが村人によって捕まり、ミロシュとの交換要員としてルカが身柄を預かることに。こうして奇妙な共同生活が始まると、いつしか2人は互いに好意を抱き始めるのだったが…。

■街に野に起こる爆撃、銃声。日常の営みを奪う戦争という愚行に対し”負けてなるか”と言わんばかりにアナーキーでパワフルな活動を繰り広げる、赤塚不二男や筒井康隆の作品に出てくるような強烈なキャラの人々。その一方で、マイペースに愛や性の営みを維持しようとするルカ。彼は『アンダーグラウンド』のチンパンジーを愛する心やさしい飼育係と同じく、正気を失わせる戦争の流れに飲み込まれかけながらも、”普遍的な営みを続けることこそ戦争への抵抗”というメッセージを訴える。
■しかし『アンダーグラウンド』も本作も、前述のアナーキーな人々のインパクトが強烈すぎて、観終わった後も彼らのことしか印象に残りにくいのが欠点のような気がする。それがあえて監督の狙いならしょうがないけれど。

ライフ・イズ・ミラクル [DVD]

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