第一週『春、出会い(4)』

■第2回にもチョイと出ていたけれど、美冬の事務所社長・猪瀬(大杉漣)本格登場。「トラブルの芽は全て始末する、強力な農薬並にね。」と冷徹ぶりを見せる。ただしあくまで「美冬を大成させる」という目的のために手段を選ばないプロであり、猪瀬が個人的に子供(ニコ本人)を忌み嫌うような描写はないことに注目。
■今回で1週目目が終了して1つの区切りとなったが、安易なテレビドラマなら”ヒロインと子供の奇妙な共同生活スタート”→”最初は馴染まない二人、あるきっかけで仲良しに”→”どんどん仲良くなって、最後は涙のお別れ”…で最終回を迎えるところを、あくまで序章として位置づけるのがこの『ニコニコ日記』。ハラホロくんのつぶやきにむせびなくケイの描写に次週予告をすっと繋げて見せて、これからドラマが転がり出していくことを匂わせて引きを作るのが憎い。
永井杏だけではないけれど、低年齢にして観る側の心をわしづかみにする存在に対して”演技のうまい子役”というのは尊敬を欠いた言葉であると思う。優れた俳優が我々に見せるのは演技ではない。「彼氏おらんやん」「仕事ないやん」と九州弁でケイに寂しさをぶつけ、「どんだおがあざんでぼ?」とケイに訴えかける姿―あれは演技ではなく、”母親に精神的にネグレクトされて心を閉ざしていたところに家族や友達の暖かさを与えられて幸せの絶頂だったところを再び元の状態に戻らざるを得なくなった小箱ニコという北九州育ちの8歳の女の子”そのものだった。もちろん、受ける木村佳乃の精一杯の冷静さ(しゃべりながらもケイとは顔を合わせようとはしない)あってのものだけど。
演出の片岡敬司氏の以下の言葉を読むと、本当に恵まれた環境で全編作られたドラマなんだなぁということが伝わってくる。

ナチュラル」にこだわる「ニコニコ日記」の撮影現場は一種独特です。例えばケイとニコの場面。さしたるリハーサルもなく、開始の合図がなければ分からないほどの自然さで芝居が始まります。スタッフはカメラ6台、収録機3台というものものしさで二人の心の揺らぎを一瞬たりとも逃がしません。「ナチュラルの裏に隠れた心の体温をすくい取りたい」それが演出家の決意です。(ニコニコ日記 NHK公式ホームページより)