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少し古いけれど、6/30のニュースソースより:

安藤美姫「心ときめく出会いがありました」--『チェブラーシカ』特別試写会

女子フィギュアスケート選手の"ミキティ"こと安藤美姫が30日、都内で開催されたロシアの人形アニメーション映画『チェブラーシカ』の試写会にてトークショーを行った。

チェブラーシカ』は、世界の優れたアニメーションを紹介する「三鷹の森ジブリ美術館ライブラリー」の最新作。オレンジの木箱に閉じ込められて遠い南の国からやってきた正体不明の小さないきもの「チェブラーシカ」が繰り広げる愛くるしいストーリーは、本国・ロシアでは1969年に公開されて以来、国民的人気を誇っている。監督は『ミトン』(2003年)で知られるロマン・カチャーノフ。手間ひまかけて作られたキャラクターのかわいらしさだけではなく都会の孤独や自然破壊の問題をベースにし、社会風刺に富んだ内容も話題の作品だ。


大会などで何度もロシアを訪れるうちにチェブラーシカの大ファンになったという安藤は、「チェブラーシカは、かわいい! の一言です。心ときめくキャラクターに出会えていつも癒されています」とコメント。スヌーピー好きで知られる安藤だが、最近ではファンからのプレゼントもチェブラーシカグッズが多いと言い、「ぬいぐるみやマグカップなどをたくさんいただいて、家中チェブラーシカだらけになっています(笑)」とにっこり。また、上映作品を見た感想を問われると「人を思いやる気持ちや仲間の大切さを感じさせてくれる作品です。たくさんの人にチェブラーシカのファンになってもらいたいです」としっかり"チェブファン"の1人として映画の魅力をアピールしていた。


チェブラーシカ』全四話完全<デジタルリマスター>版は7月19日(土)よりシネマ・アンジェリカほかにて全国ロードショー。

もちろんミキティのことは別にどうでもよくて、7年ぶりの劇場公開(しかも「完全版」だとさ*1)となるチェブラーシカの話。まさかジブリが絡むことになるとは。
そもそもチェブラーシカが日本国内で公開されブームとなったのは、その昔吉本興業の映画部門(シネマワイズ)を切り盛りしていた吉田久美子氏の功績による。チェブの愛らしさに惚れ込んだ吉田氏が私財を投じて様々なトラブルに巻き込まれながらチェブを公開し様々なグッズの企画・販売を行った。その奮闘振りについてはチェブ事務所日記に詳しいが、公開後もさらに様々な国際的なトラブルが立ちふさがる。

チェブラーシカ」は、1969年から83年にかけて全四話の短編が公開されて以降、ロシアでは知らぬ者がいない、絶大な人気を誇る国民的映画となった。その人気は世界中に飛び火し、日本においても2001年に渋谷のミニシアターで公開され、子どもから大人まで数多くのファンを生んだ。

しかしその後、ソ連崩壊後の混乱の煽りを受けた「チェブラーシカ」は、ロシアやアメリカなど権利保有を主張する企業により訴訟問題に発展するなど、版権トラブルに巻き込まれた。2006年、日本法人2社からなる「チェブラーシカプロジェクト」は、それら版権問題をすべて解決し、アニメーションの普及・啓発を目的とする三鷹の森ジブリ美術館に協力を要請。

こうして、2008年夏、映画「チェブラーシカ」全四話完全<デジタルリマスター>版が、晴れて劇場公開を果すことになった
(以上、公式サイトより)


吉田氏→日本法人2社(テレビ東京とどっか)→ジブリ美術館 というライセンスのいきさつの詳細は知らないけれど、傍から見ると【インディーズレーベルで根強い人気を誇ったアーティストが大手資本からメジャーデビュー】という図式を連想してしまう。メジャーデビュー、となるとそれなりの規模の【投資】と【回収】のバランスの中での市場プロモーション展開があるわけだけど、

オレンジの木箱に閉じ込められて、遠い南の国からやってきた、大きな耳の小さないきもの。起こしてもすぐに倒れてしまうので「チェブラーシカ(ばったりたおれ屋さん)」と名づけられたこの正体不明のいきものは、動物園にも受け入れを拒否され、都会の片隅の電話ボックスで暮らしていた。そんな彼が出会ったのは、動物園で働く、一人暮らしの孤独なワニ・ゲーナだった。


「この街にはいったい、どれくらいいるんだろう。ひとりぼっちの人が」


ふたりの優しさが今、この街に、ささやかな幸せを生み出してゆく。


詩情ゆたかな童話的世界を舞台に、動きの細部にまで人間の心をそそぎ込まれた人形たちが、愉快に働き、歓びをわかち合い、哀しみにふれ、無責任さに怒る。一見無邪気なエピソードに惹き付けられる一方で、描かれるのは現代にも通じる社会のひずみ。公開から約40年たった今もなお、ますます人々を魅了するこの古典的名作には、“かわいい”だけで終わらせることのできない、時代と国境を越えた生命力が満ちている。

間違いではないのだけど、そこまで良識的な解説をしなくてもねぇ。小さな子のお気に入りのおもちゃを大人が取り上げて箱にしまって気軽に遊べなくしてしまうことはカチャーノフも望んでいない気がするのだけど。

そもそも吉田氏はチェブの扱い(売り方)についてきちんとポリシーを貫いていた人で、以下ご本人の文章引用。

■チェブの新作? 2/20/2003 UPTATE
 最近よく、チェブの新作をつくりませんか?という話しがきます。私があまりにもきっぱり<いやです。>って言うので、勝手にロシアのスタジオと話をする会社がでてきたり、この前は、私が話しをことわりにくい共同出資先に圧力をかけてくる会社がでてきたりしています。私も、チェブに続きがあったら絶対みたいし、全部で3本しかないと知ったときはショックでした。監督のカチャ−ノフが生きていれば、お金を出資してでも作ってもらっていたかもしれません。
 でも、カチャ−ノフはもういません。チェブラーシカの魅力は、やっぱり、原作よりも、絵よりも、あの表情であり動きであり声であると私は思っています。誰かが演出したというようなもんじゃなく、あれは、生きているものの動きだと思ってる。カチャ−ノフはチェブを演出したのではなく、チェブが見えていたんだと思う。何回もみた人には分かると思うけど、この映画には無駄な動きがいっぱいある。チェブがはじめてゲーナの家にいった時、自己紹介をした後、ゲーナが辞書をとりにいっている間、つつつと前にすすんで積み木をちょっとさわるシーンがある。<ああ、チェブは家にはいってきた瞬間から積み木にさわりたくてしょうがなかったんだなあ。。>って思う。そんなことまでわざわざやってる。ゲーナと工場に行く時、チェブは警戒して忍者歩きになってるし、ゲーナの家の前でそっとお花を摘む仕種も、なんかめちゃめちゃ素敵だ。(例え、家にはいったらなくなっていても!)なんていうか、あれは、だれかが作ったものじゃなく、カチャーノフの中にいた実在のチェブだと思う。私たちがみているチェブはカチャーノフのチェブ。別の人がつくれば、それは、チェブラーシカじゃない。<日本には優秀なアニメーターがたくさんいるから大丈夫!もし、気に入らないのなら、チェコでつくりましょう!>こんな話がでる度に、どうしてわからないんだろう?この人は?と思ってしまいます。
 確かに、<たくさんのかわいいキャラクターが次から次へとできてくる日本の業界で、人気を保とうと思ったら、新作つくらないとだめだよ!ドラエモンをみてごらん>というのも分かります。でも、そこに紛れこんだら逆に絶対ダメだとおもっています。<たくさんの人がやって欲しいことを、君はどうしてやらないんだ?>たくさんの人の興味をあの手この手でつなぎとめておくために右往左往することより、こちらがいいと信じた売り方に、買い手をあわさせる(えらそうな言い方ですが)方を私は選んできました。<どうですかねえ?これ、もうちょっとあなたの家に近いところに店だしましょうか?わざわざ遠いとこまで買いにいくのめんどくさいですもんねえ?え?ピンクの方がいい?そうですよね、地味ですもんね。ぬいぐるみ、色、ピンクにしましょう!え、?飽きた?じゃあ新作つくりましょう。日本にくる話、つくりましょう!テレビで放送しましょう。いつでも見れるしね。。。>いやだーーー<チェブ、かわいいやろ?うち、遠いよ。でも、おもしろいとこだから遊びにきて!みんなーそっちじゃないでーー次はこっちーーついてこいよーー!>の方が絶対楽しい。そりゃ、私のやってることは、<やーいチェブほしいやろーーじゃあここまでおーいで!>ってことだ。むかつく人もいっぱいいるだろう、<チェブを私物化するな!>っておもう人もいる。でも、物を買ってもらうためにサービス過剰になりすぎている時代で、チェブに対して努力をしてほしい。好きな人に努力するみたいに。好きな人のために、遠くまでプレゼントを買いに行ったり、食べたいものを我慢してダイエットしたり、時には悲しくて泣いたり。。そんな気持ちをチェブにも持って欲しい。チェブのために、寒い中遠くまであるいたり、遠くて小さい映画館を訪ねてみたり。。そして、もう絶対に作れないものだからこその良さや切なさを大切に思って欲しい。チェブの3話目の最後の歌は、もう本当にあれでおしまいだからこそ、切なくて泣きそうになる。あれで、はい日本にきましたよーーとやられたら、興醒めもいいとこだ。
 だいぶ前に人形作家の川本喜八郎さんから、カチャーノフのはなしをきたことがあります。いっしょにお話をしたことがあるそうで、<とてもハンサムで、背が高くて、そして、とっても優しいひとだったよ>と、教えてくれました。もし、彼が生きていたら、私になんていってくれるんだろう???
 ながなが書いてしまいました。たぶん私は超ナルシストでさぶくて勘違い人間です。これは、理想論で、ビジネスなんだよって言われます。私も、チェブビル立てたいです。でも、今じゃない。今はチェブで荒稼ぎする時じゃない。チェブの名前であの映画を配給できたら、もう私はひっこんでもいいです。だから、新作はやめてください。そして、なんだかんだいいつつ、私の意見を尊重してくれた(守ってくれた)クロックワークスさんに感謝しています。次も当てます。今は許して下さい。苦労していつもチェブカフェにきてくれている人、商品を送料をわざわざはらってネットで注文してくれている人、本当に感謝しています。ありがとう!

上の太字にした部分には、私も泣きたくなる。自分が欲しいものを手に入れるために汗かいたり知恵を働かせたり気を配ったり我慢したりすることで、それが手に入った時の満足感や思い出が深くなったり、逆に「私は本当にそれが欲しいのかな?」と思い改めることがあったり、手に入らなかったら何がいけなかったのかを真剣に考えたり。そんな努力をしないくせに権利を振りかざしたり理不尽な要求ばかりつきつける輩は大嫌いですよ。
文章の論点が途中から変わってしまったことは気にすまい。

*1:第4話「チェブラーシカ学校へ行く」を目玉にしてるようですが、既発売のDVDには収録済。作品のクオリティについてはまぁまぁ(苦笑)