正式発表

こうのさん作「夕凪の街」映画化
▽下関出身の佐々部監督 8月広島ロケ
広島市西区出身の漫画家こうの史代(ふみよ)さん(37)=東京都中野区在住=の広島原爆をテーマにした話題のコミック「夕凪(なぎ)の街 桜の国」が、映画化される。下関市出身の佐々部清監督(48)がメガホンを取り、今夏に広島市内でロケがある。
単行本は二〇〇四年十月に出版。文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞などを受賞した。広島で被爆した女性の十年後を描く「夕凪の街」、一九八七年と二〇〇四年の東京を舞台に被爆二世の姉弟らが主人公の「桜の国」の二部構成。日常を淡々と描く温かい筆致が、若い世代らに共感を呼び、現在約十七万部、韓国やフランスなどで翻訳版も出ている。
佐々部監督は、「半落ち」で〇四年度日本アカデミー賞作品賞を受賞。監督が所属する東京の映像製作会社などが映画化に踏み切り、キャスティングを進めている。一九五五年の広島の街を再現したオープンセットを埼玉県内につくり、七月二十日にクランクイン。八月十日から広島ロケをする。来年夏に公開予定。
ロケハンで今月、広島市を訪れた臼井正明プロデューサー(41)と佐々部監督は「被爆の記憶を引き継ぎ、明日に向かって希望を持って生きている主人公。現代の家族のきずなの物語として丹念に描きたい」と語る。
こうのさんも「佐々部監督から漫画のキャラクターに何度も会いたい気持ちになるような映画を撮りたい、と聞いた。世界の人に一層親近感を持ってもらえれば嬉しい」と歓迎する。(円山文雄)
中国新聞 6月20日付記事)

■しばらく前に新聞で読んだ中沢啓ニのインタビューで「某漫画の映画化で監督をやる」という旨の発言があり、まさか…と思っていたけど違っていて安心(?)。
(先日無くなった)黒木和雄監督がメガホンを、というのも一部の噂であったようだけど、それは監督が存命でもありえないと思う。『父と暮せば』で十分にヒロシマを表現してくれて、同じテーマの/それ以上の作品を撮るモチベーションは無いだろうから。

■佐々部監督作品は『チルソクの夏』しか観ていないけれど、他の作品の巷の評判を含めて、『夕凪〜』の持つ庶民性をうまく引き出してくれそうな期待はある。
自分の中では、『夕凪の街 桜の国』は反戦ものであると同時に”少女青春もの”という捉え方をしているのだけど、そう思いながら『チルソクの夏』を振り返ると水谷妃里は皆実に、上野樹里は七波のイメージがなんとなく…。

■あとは脚本とキャスティングの問題。まず、原作の持つ、説明くさい台詞や説明を一切廃した(何度も読み返すことで味わいと発見がある/一読しただけでは背景関係が理解できない箇所もある)”奥ゆかしさ”を表現するには、詳細に計算された脚本がきっと必要になると思う。(かく言う私も実は映画化を想定して原作の脚本化にいっときチャレンジしたのだけど頓挫した。)
そしてキャスティングのネックは、”子役”と”広島弁”。幼いころの七波や東子、そして京華を体言できる子役が果たして存在するのか、そしてたおやかな広島弁を操れる女優は!?うーむ、少し不安も…。

■とにもかくにも、広島でロケが始まったら追っかけてみることにしよう。しばらくは広島フィルムコミッションでのエキストラ募集情報をチェック。

『夕凪の街 桜の国』初見時のレビュー
昨年のフランスでの企画展示レポ