鴛鴦歌合戦

■1939年作成(作成から約70年経過)。これまで劇場で観た映画としては最も古い映画となる。過去にサロンのフィルマラだけで2回観たこともあり、『ロッキー・ホラー・ショー』程ではないけれどもフィルマラの名物邦画のような印象もあるが、フィルムマラソンの実施回数が少なくなってきたこと、そしてここまで古い日本映画のリバイバルは難しいだろうと諦めていたところに、リマスター上映が決定との情報があったのが今年に入って間も無くのこと。しかし”ブルーレイディスクによるプロジェクタ上映”という、地方の映画館では恐らく無理な形態が取られていることを知り、がっくし。所詮はDVDソフト化のためのリマスター/劇場上映はそのPR程度のものか…とユーロスペースの上映スケジュールを恨めしく眺める日々。
■上映の意向はないのかと、サロンシネマの掲示版で尋ねてみたところ、”デジタルでは無理なのでフィルムではいつかやりたい”と住岡支配人からのコメントあり。しかしフィルムが修復/再プリントされている可能性も、ただでさえ立て込んでいるサロン/ツインのスケジュールの中で上映できる現実性も乏しく、ますます諦めていたところに横川シネマ!!の上映スケジュールに入っているとの朗報。”ぼーくはわーかいとのさま〜♪”と口ずさみながらいそいそと劇場に向かった。(←多少誇張あります)

■上映形態がフィルムなのかDVDなのかははっきり確認せずじまいだったけど、画面/音声のノイズは気になるほどでもない状態。10年ぶりの再見で、自分が殆どストーリーも見せ場も覚えていなかったことに気付き、新鮮な気分で観ることができた。「2週間の早撮り」という荒業では十分に演出する余裕がなかったかもしれないが、流れる楽曲が途中から平板になり飽きてきてしまい、正直、手放しで”大傑作”とはいい難いのも事実だ。それでも、OP明け直後の、”おとみちゃーん!おっとみちゃんたらおとみちゃん♪”と橋を軽やかに降りてくる若衆カルテットでつかみはOKだし、市川春代志村喬の親子それぞれの歌唱・やりとりはどこまでもコミカルで可愛らしく、ディック・ミネの家来達を相手の片岡千恵蔵の立ち回り演出(効果音やセリフはなく、劇伴曲のみをバックにしたダイジェストフィルム風のカッティング)は素敵なセンスだ。そして何より、いろいろあって大団円を迎える登場人物たちの、日傘を構えてのカーテンコールの”天晴れ”ぶりはどうだ。やはりまた数年後にスクリーンで逢いたくなる、軽い熱病のような魅惑の映画だ。よくぞ日本人に生まれけり。

鴛鴦歌合戦 [DVD]

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