『ロング・エンゲージメント』

【解説】(allcinema ONLINEより)
アメリ」の鬼才ジャン=ピエール・ジュネ監督が、再びオドレイ・トトゥを主演に迎え、セバスチャン・ジャプリゾの全仏ベストセラー小説『長い日曜日』を壮大なスケール映画化したミステリー・ラブ・ロマンス。第一次大戦を背景に、戦死の報せにも婚約者の生存を確信し、愛の絆と直感を頼りにいくつもの謎を解き明かしながら愛する人の捜索を一途に行なう一人の女性の姿を、ファンタジックなテイストと戦場におけるリアリズムを交錯させつつ、ジュネ監督こだわりの映像美でミステリアスに綴ってゆく。
 第一次大戦下のフランス、ブルターニュ地方。幼い頃の病気の後遺症で脚が不自由なマチルド。戦場に旅立った恋人マネクの帰りを待ちわびていた彼女のもとに、ある日、マネク戦死の悲報がもたらされる。彼を含めた5人の兵士が軍法会議で死刑を宣告され、武器も持たずにドイツ軍との中間地帯に置き去りにされたという。だが、マネクの最期を見届けた者はいない。不思議な愛の直感を信じるマチルドは、マネクがまだどこかで生きていると確信する。以来、彼女は私立探偵を雇い独自の調査を始めると共に、自らの直感を頼りにマネクの消息を尋ねて回るのだった…。

ワーナー・ブラザーズ資本の大作。オドレイ・トトゥとジュネの組み合わせとくれば、そりゃぁ会社側は『アメリ』のイメージで売りたいだろう。しかしパブリシティを見ても、それ以上の明確な作品の売りやイメージが今ひとつ伝わってこない。実際作品を見てみると、ロマンスとしては血が多すぎる/戦争ものとしてはリズムが冗長すぎる/ドラマと呼ぶにはキャラの掘り下げが浅すぎる。―何が売りなのかが判りづらい/上映時間は長い…映画会社の広報担当者の苦労が伝わってきた。

■トトゥ演じる女性主人公が、出征したまま行方不明になった婚約者の行方を探すために、6人の関係者の証言をひも解いていく。しかし観ているほうはその6人の関係の糸が絡まないように頭の中で整理することで手一杯、途中で挿入されるヒロインと婚約者との回想シーンも、余韻を味わうよりも次のシーンのための話の整理の時間に費やしてしまう。そして観終わった後の感想は「なんとか話についていけてよかった」というところ。

■原作はミステリー小説だという。しかし小説本なら巻頭や表紙カバー横の”人物紹介”ページに指を挟んで事あるごとに見返すこともできるが、映画館での観賞ではシーンの一時停止も巻き戻しも利かないのだ。2時間30分という長尺も、シネコンやミニシアターではない街中のロードショー館の椅子ではつらい。人物関係が整理されたチラシを片手に、椅子も空気もゆったりとしたミニシアターで見ていたのなら感想も違っていたであろう映画。

ロング・エンゲージメント [DVD]

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