『アメリカン・スプレンダー』

【解説】(allcinema ONLINE より)
インディペンデント系の低予算作品ながら全米の賞レースを席巻し大きな話題となった風変わりな人生コメディ。自らの冴えない毎日をコミックに著した実在の原作者の半生を、大胆な手法を用いつつ、シニカルな中にも温かな眼差しをもって描く。監督は本作で劇場長編デビューの夫婦監督シャリ・スプリンガー・バーマンとロバート・プルチーニ。主演は個性派バイプレーヤー、ポール・ジアマッティ。共演に「アバウト・シュミット」のホープ・デイヴィス
オハイオ州クリーブランドの病院で書類整理係として働くハービー・ピーカー。その外見もさることながら不器用この上ない彼の毎日は退屈で冴えない日々。そんな彼がある日、自分の日常をコミックにしようと思い立つ。さっそく友人のロバート・クラムに作画を頼み、コミック“アメリカン・スプレンダー”を創刊する。するとこれが予想以上の評判を呼び、やがてハービーはこの作品の熱心な読者ジョイス・ブラブナーと出会う。共通点の多い2人はすぐに意気投合、積極的なジョイスのリードで即結婚、ようやく人生が好転していくハービーだったが…。

■本編の終盤近く、「アドバイス」の場面が心に残る。自分のことしか見えておらず、怒りや欲求不満をエネルギーに生きるしかなかった彼が、他人に対して関わりを持とうとするようになった瞬間。新しい自分に生まれ変わる瞬間こそ、人生における「輝き」の瞬間なのかもしれない。
■有名になったといっても彼の生活は以前と変わる訳ではない。しかし映画のラストシーン(といっても現実の彼の人生においてはまだ通過点だけど)で、仲間から誕生日の祝福を受けるシーンでの彼の表情には「いろいろあったけど、ここまで生きてきた」という揺ぎ無いものがあった。

アメリカン・スプレンダー [DVD]

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