『真珠の耳飾りの少女』

【解説】(allcinema ONLINEより)
17世紀に活躍した寡作の天才画家フェルメールが描いた一枚の絵を巡る歴史ドラマ。ベストセラーの同名原作を基に、一般に『青いターバンの少女』の名で知られ、日本でも人気の名画『真珠の耳飾りの少女』に秘められた謎に迫り、フェルメールとモデルの少女が交わす複雑な心の機微を静謐にして官能的に綴る。主演は「ゴーストワールド」「バーバー」のスカーレット・ヨハンソン。監督はこれがデビュー作となるピーター・ウェーバー。撮影のエドゥアルド・セラフェルメール絵画の光と影を鮮やかに再現。
1665年のオランダ、デルフト。つましい家庭の少女グリート。彼女は、タイル職人の父が事故で失明したことから一家の家計を支えるため働きに出る。そして、画家ヨハネス・フェルメールの家で奉公することとなった。夫婦ゲンカが絶えず、子供たちが騒々しい中で日夜働き続けるグリート。そんなある日、フェルメールはグリートの窓掃除により生まれた新たな光を見て新作を描くきっかけを掴む。フェルメールは彼女の色彩感覚を認め、絵の具の調合を手伝わせるようになる。しかし、フェルメールの創作意欲を刺激するグリートの存在は、やがて周囲に思わぬ波風を起こしていった…。

■史実に語られているフェルメールの人物像と同じく口数の少ないストイックな脚本を、重厚でエモーショナルな音楽と構成・色合いともに綿密に計算された撮影が盛り上げていく…総合芸術としての映画の底力を感じた。
■ちょうど本日のNHK”新・日曜美術館”において、フェルメールの作品『画家のアトリエ』をアーティストの森村泰昌氏が実物で再現する製作風景の特集あり。作品に描かれているフェルメールのアトリエの実物の大きさ・距離感の割り出しや当時の衣装の再現、そしてモデルの少女とフェルメールとの関係の考察等、この映画を見た直後だったのでとても興味深く見る。
■番組の中では『青いターバンの少女』そしてこの映画のことには(あえて意図的に?)一言も触れずじまいだったが、”当時のタイル”そして”カメラ・オブスクラ”についての解説が行われていた。…目の前の風景を2次元の映像として切り取るカメラ・オブスクラを、当時の画家は単なる風景模写装置として利用したが、フェルメールは自分が「これだ」と感じられる映像を見つけ出すための手段として活用していたのでは…そんな解説もされていた。
■オブスクラを通じてキャンバスに封じ込められたモデル。それを捉えたときの画家はどんな気持ちだったのか、また捉われたモデルの感情はどのようなものであったのか… 映画のラストに映し出される『青いターバンの少女』は、作品に対する味わい方そのものについても、見る側に投げかけてくる。”美しい””感動した”という感想から一歩先に踏み込んで、”なぜ作者はこのモチーフを選んだのだろう?””この作品によって作者の心境はどのように変わっていったのか?”という考察を行っていく楽しさは絵画も映画も一緒だろう。

真珠の耳飾りの少女 通常版 [DVD]

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