『みんなのしあわせ』

【解説】(allcinema ONLINEより)
死んだ偏屈老人が隠し持っていた大金を巡って、同じアパートに住む住人と、偶然その事実を知った中年女との間で繰り広げられる壮絶な争奪バトルをブラックで荒唐無稽に描いたコメディ。監督は「どつかれてアンダルシア(仮)」のアレックス・デ・ラ・イグレシア。主演は「神経衰弱ぎりぎりの女たち」のカルメン・マウラ。
不動産会社で分譲アパートのセールスをしている中年女性ジュリア。なかなか思うように成績が上がらず少し落ち込み気味。そんなある日、ジュリアはひょんなことからとあるアパートに住む一人暮らしの老人の死に遭遇する。しかしこの老人、なんと3億ペセタもの大金を20年もの間隠し持っていたのだ。ジュリアは偶然その事実を知り、アパートからの持ち出しを図るのだった。が、同じアパートの住人たちもその大金の存在を知っていた。しかも彼らはこの20年、老人が死ぬのを今か今かと待ちわびていたのだった……。

■2時間もののサスペンスにありそうなベタなストーリーを暴投寸前の力業で引っ張り、クライマックスは大笑い…その一方、カメラワークや照明等の演出はさりげなく丁寧である。
■オープニングタイトルは(最初だけ)『めまい』、エレベーターの墜落は『スピード』、アパートの住人達との攻防戦は『デリカテッセン』、そしてクライマックスは『マトリックス』…等、過去の映画の美味しいエッセンスがパロディとして見え隠れ。
■中盤までにはなかなか住民達の行動がハジケてくれないのでテンポが悪く感じたけれど、それは住民達の小市民的な良識の現れでもあったのだろう。シリアの部屋の捜索が本人にバレて「出て行け!」と言われて、ちょっとバツが悪そうに素直に出ていく様子とか、エレベータの件を「あくまで事故」として自分達に言い聞かせる様子とか。
■しかし管理人の死後、それまで長年溜まっていたストレスを発散するかのように活動がエスカレート、そしてクライマックスの追跡シーンは…必死さに体力がついていかない男と、最後の最後まで体を張ってくれたオバさんたちに爆笑と拍手喝采