マカロニ・ウエスタン 800発の銃弾

【解説】(allcinema ONLINEより)
 かつて多くの西部劇のロケ地となったスペイン南部の寂れた町を舞台に、企業論理に刃向かう元スタントマンの男たちを力強く、そして哀愁いっぱいに描いた痛快ウエスタン・アクション。監督は「どつかれてアンダルシア(仮)」「みんなのしあわせ」のアレックス・デ・ラ・イグレシア
 かつてはマカロニ・ウエスタンのロケ地として栄えたスペイン・アルメリア地方の撮影所“テキサス・ハリウッド”。ブームも去った今は、数少ない観光客相手のウエスタン村となり、元スタント・ガンマンたちがしがない実演ショーで細々と食いつないでいた。そんなある日、ウエスタン村の座長を務める元スタントマン、フリアンのもとに、彼の孫だと名乗る少年カルロスが現われる。少年は、やはりスタントマンだった父の事故死の真相を知るためやって来たのだった。最初は戸惑うものの、やがて少しずつ心を通わせていくフリアンとカルロスだったが、同じ頃町ではウエスタン村の存亡を左右する陰謀が秘かに進行していたのだった。

■スペイン人監督としてはペドロ・アルモドヴァルと並んで(たぶん)、コンスタントに作品群が日本国内で(そして広島でも)劇場公開されているアレックス・デ・ラ・イグレシアの最新作。広島公開はてっきり横川シネマ!!だと思っていたけれど今作の配給会社がシネカノン、しかしパイプの強いサロン/シネ系は既に他の収益がとれそうな番組のやりくりで一杯。ようやく1週間限定しかもレイトのみという不遇な公開が始まったころにはDVDが発売済…。しかし”夢だけを頼りに現実を乗り越えようとする男たち”の映画と聞けば、そのラストがどうなるのか映画館で確かめずにはいられない。
■アヴァンタイトル、スクリーンに広がる荒野の馬車チェイス(おお、シネスコだ)。タイトル画面は往年の西部劇風の赤黒ツートーンの止め絵スライドアニメ(『WildWildWest』もそーいえばそんなタイトルだったな、そして見せ場はそこだけだったな…)。2時間強の物語の前半一時間が「起」「承」、後半一時間が「転」「結」できっちりと展開。スペイン映画のレイティングは緩いのか?倫理的にどうかと思うけど明るいお色気。見せ場の篭城交戦シーンには本物の装甲車も数台投入して画面的には中々の迫力あり。ジャンルとしてはアクションではなくて悲喜劇なので、タイトルにもある銃撃戦は最小限の流血に留める。…良くも悪くもバランスの取れた*1、スペイン製エンタテイメント映画。
■過去にしがみついて生きることしかできない男がいる。そんな男に寄り添い、一度くらいは自分も見せ場を作って死ぬことを願う男もいる。そして、そんな彼等に憧れつつ現実との狭間に揺れ、嫉妬心から彼らを裏切る男もいる。きっと誰もが”それ”を望んだラストシーンはそんな不器用な男たちへの餞

*1:前作『みんなのしあわせ』ほどの毒気やキャラ立ちが無かったのがマイナス要素。『みんなの〜』を観ていなければまた評価は違ったと思う。