『バットマン ビギンズ』

【解説】(allcinema ONLINEより)
DCコミックスの人気キャラクター“バットマン”を「バットマン&ロビン/Mr.フリーズの逆襲」以来8年ぶりに映画化したアクション大作。「メメント」「インソムニア」のクリストファー・ノーランを監督に迎え、バットマン誕生に至る主人公ブルース・ウェインの秘められた過去を壮大なスケールで描く。主演は「アメリカン・サイコ」のクリスチャン・ベイル。共演にマイケル・ケインリーアム・ニーソン。また、日本の渡辺謙もメインキャストに名を連ね話題に。
大富豪の家庭に育ったブルース・ウェインは少年時代、井戸で遭遇したコウモリの大群に圧倒的な衝撃を受け、またさらには彼の両親が目の前で殺されて大きなショックを抱え込む。やがて父の遺した企業を受け継いだブルースだったが、強いトラウマと親の仇への復讐心は消えず、犯罪者の心理を知るため自ら罪人となる。そんな彼はある日、デュガードという男と運命的な出会いを果たし、不正と闘うことを決意。そして彼の薦めにより、ヒマラヤの奥地に潜む“影の同盟”なる自警団のもとで心身を鍛え、心の闇を解放する。こうして彼は、ゴッサム・シティへと舞い戻って来る。街は悪の組織と暴力がはびこり、腐敗が進んでいた。自らの使命に確信を持ったブルースは、全身黒いコスチュームを身に纏ったバットマンとなり、巨悪と対峙する道を選ぶのだった。

■WBのトレードマークの直後に始まるのは、D.エルフマンによるおなじみのテーマ曲に載せたタイトルロールでも、ゴッサム・シティのダークな風景でもない。大戦時の捕虜収容所のような場所でゴロツキどもと素手でラフファイトを行なうC.ベールの姿だ。
■「映画を間違えたか?」と思わせる導入部を手始めに、C.ノーランの演出はこちら側の予測を裏切り続ける。T.バートンのような、ダークでフリーキーな悪役描写も、J.シューマッカーのようなキッチュなハッタリもない。アクションシーンはカット割りが荒っぽく細かすぎて何をやっているのか判らない。バットモービルゴッサムシティのデザインはリアリティの名の元、味気ないものになっている。

■…と、”コミック原作のアクションヒーローもの”としては欠点だらけなのだけど、”裏の顔を持つ青年実業家が最新兵器を武器に悪人と対決するアクションもの”として割り切って観ると、映画としての満足度は高い。悪役スケアクロウのアジトでバットマンが”仲間を呼ぶ”ためのSFガジェット的ギミックにはシビレたし、M.フリーマン演じるフォックスの役柄は007シリーズのQそのものだ。
■そしてM.ケイン演じる”アルフレッド”。彼の役割は、B.ウェインに訓戒を与えるだけなく、作品そのもに格調とユーモアをもたらす存在である。ゴードン警部補役のG.オールドマンは特殊メイクをしている訳でもないのにクレジットで名前を見るまで彼だとは気付かなかった(…不覚)。それ程のカメレオン振りで”謎のヒーローに協力する一井の警察官”を務めている。WBは当然のことながらこの作品を仕切り直しとしての新シリーズ化を企画しているようだが、このキャスティングが続くのならば毎回楽しみにしたい。

■音楽はジェームズ・ニュートン・ハワードハンス・ジマーという豪華二枚看板。しかし旧シリーズのD.エルフマンによるテーマを超えるインパクトの曲は無し。旧シリーズのイメージを一新するビジュアルや演出を楽しみながらも、最後の最後までエルフマンのテーマ曲がどこかで鳴り響くことを心待ちにしていた自分であった。

バットマン ビギンズ [DVD]

バットマン ビギンズ [DVD]