斉藤光浩のこと

活動停止からもうしばらくすれば3年になるが、知らないうちにこんなものが。

A.R.B.THE BEST“Long,Long Way”(DVD付)

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活動再開や世間的な再評価の動きがあるわけではないのに、なぜに今?
アルバム未収録曲があるでもなく、未試聴のものは『HARD-BOILED CITY』のPVくらいか。
全5期分/歴代4人*1のギタリストの作品が一度に聴けるベスト盤としては唯一のアイテムではある。

さて、ARBフリークが集まると「ARBの歴代ギタリストの中で誰がNo.1か?」という話題になることがネットでもこれまで多々あった。彼らギタリストは互いに勝負している訳でもないのに非常にアホらしい話題である*2。でも「ARBの歴代ギタリストの中で誰に一番思い入れがあるか?」という質問になると話は別だ。僕は迷わず、【斉藤光浩】の名前を挙げる。ARBというバンドの名前を初めて聞き、その音を始めて耳にし、強く印象に残ったのが光浩の曲で光浩のプレイだったから。

1985.7.7『MUSIC WAVE '85』@つくば万博エキスポプラザ

1.闘い抜くんだ  
2.HOLIDAY
3.BLUE COLOR DANCER
4.魂こがして

その他の出演者…中村あゆみレベッカ、ZIGZAG、HOUND DOG

『MUSIC WAVE』とは80年代にNHKが毎年主催していた音楽イベントで、世間的には同年にBOOWYが出演し大晦日に全国放送されたことでBOOWYがブレイクするきっかけとなったイベントとして有名かも。この年の様子はテレビでも放送されていたが、僕はNHK-FMでその様子を聞いていた。ARB以外の出演者は当時購読していた『GB』で紹介されていて知っていたけど、ARBは全くフォローされておらず*3、どんな素性のバンドなのかも知る由もなかった。それでも、

「男は仕事終わりバスに乗りため息一つつきながら 愛しいあの娘が待つ家までひととき夢を見る
 周りの仲間たちも疲れ果て重く口を閉ざしたまま 窓越しに額を押し付けて外を眺めている」(『HOLIDAY』)

という石橋凌の詩が示す情景は世間知らずの中学一年生の脳裏にも伝わってきた。何より、そんなことを唄っているバンドは他に聴いたことがなかった。
ただし、それからすぐにARBフリークになった訳ではなくて、頻繁に聴き出したのは86年の白浜久加入後、メディア(それは田舎の場合は【NHK-FM】を示すのですが(苦笑))への露出がより頻繁になった以降。もっと言えばファンになったのは89年の解散後に『RED BOX』を聴いてからなのだけど、その話は長くなるので割愛。

光浩のことに話を戻すと、83年の田中一郎の脱退後、ライブサポートを行っていた複数のミュージシャン*4の中からBOW WOW*5の斉藤光浩が”スカウト”され加入。一郎のスタイルが”2丁拳銃を打ちまくりながら路上を疾走するギャング”とするなら、光浩のスタイルは”切っ先鋭い日本刀を鮮やかに切り込むサムライ”と言うところか。
ただし、それまでの音楽的コアだった一郎のファンからの光浩に対するプレッシャーは少ながらずあり、加えてこの時機、バンドの知名度や売上・動員数が思うように伸びないことに焦りを感じていた凌はサウンド面での革新を模索していた。打ち込みやシンセ、ブラスの導入、外部プロデューサー*6の起用。メンバーのファッションもTシャツ/革パンツからカラーシャツ/ジャケットへ。バンドの変革の翼を担うには光浩の資質は充分ではなく、ほぼ「解雇」のかたちでバンドを去ることになった*7

かと言って、光浩の手がけた曲/サウンドが評価の価値がないわけではない。
『戦い抜くんだ!』『ONE WAY TRIP』『GOD BLESS THE RING』等のバンド存続の気概を感じさせる名曲や『HOLIDAY』『明日かもしれない(MAY BE TOMORROW)』等の社会描写力の鋭い曲はこの時期の歌(いずれも光浩作曲*8)であるし、線が太いとは言えないギターの音もストイックで端正であり、光浩のルックスの良さと相まってかっこいい。

光浩在籍時最後のステージは、光浩が加入直後に行われたライブ*9と同じ、ボクシングリング上でのライブとなった。

1986.6.4『God Bless The Ring』@品川プリンスゴールド 特設ステージ

SET LIST*10
SE:挑戦者-ARB-のテーマ

01.God Bless The Ring

02.THE BOXER
03.闇をぶっとばせ
04.BOYS&GIRLS
05.Do It Boy
06.トラブルド・キッズ
07.明日かもしれない
08.Blue Color Dancer
09.Give Me A Chance
10.THE WORKER
11.HOLIDAY
12.AFTER 45

13.踊り子ルシア
14.ファクトリー
15.ユニオン・ロッカー
16.闘い抜くんだ!(Fight it out!)
17.Let's REVOLUTION
18.あの娘はアトミック・ガール
19.War Is Over!
20.ウィスキー&ウォッカ
21.黒いギター(Passion!Not Fashon!)
22.魂こがして

e1
23.YELLOW BLOOD
24.ROCK'N ROLLER [ゲスト・白浜久]

25.TWIST&SHOUT [ゲスト・白浜久]

e2
26.ONE WAY TRIP

DAYS OF ARB Vol.2

DAYS OF ARB Vol.2

*1:創成期+第1期…田中一郎、第2期…斉藤光浩、第3期…白浜久、第4期…内藤幸也 で全5期ね。

*2:この手の話題を振ってくる輩は田中一郎ファンであることが多い

*3:当時彼らのことを取り上げていたのは『アリーナ37℃』くらいだったのかなぁ。

*4:他には『DIS』の頃のルースターズ花田裕之

*5:BOW WOWはその後ボーカルに人見元基を迎え”VOW WOW”となり、以下省略。

*6:85年発表の『砂丘1945年』のプロデュースは当時PINKとしてファーストアルバム『PINK』を発表した後のホッピー神山

*7:ARBは良くも悪くも石橋凌のワンマン・バンドであり、06年3月の活動停止の背景もバンドのサウンドや活動面での彼の主張がメンバー(特にキース)や事務所側との軋轢を生んだことは想像に難しくない。ただそれは結果論であって、”どうやってバンドを存続させていくか”を暗中模索してきた凌のバンドマネジメントの軌跡は生々しくて魅力的な【物語】である。

*8:『YELLOW BLOOD』『AFTER'45』もこの時期の曲ではあるが、いずれも作曲は凌のためピックアップからは外しました

*9:1983.12.19 "アッパーカットツアーデラックス〜3日で歴史を見せてやる"@後楽園ホール

*10:ここに書いたリストは1986.6.28『God Bless The Ring』@兵庫県立文化体育館のリストであるが、恐らくは同じと思われる。R兄さん、元気ですかーっ!?