バンドライフななめ読み

BAND LIFE―バンドマン20人の音楽人生劇場独白インタビュー集

BAND LIFE―バンドマン20人の音楽人生劇場独白インタビュー集

■1970年生まれの吉田豪が、評論家の立場ではなくロックファンの立場から赤裸々なインタビューを敢行した単行本。
■インタビューされたミュージシャンを、バンド本体が(一般のお茶の間に)ブレイクした時期で並べるとこうなる。かなり私の主観も入っていますしGASTUNKケントリがお茶の間でブレイクした記憶はないのですが(苦笑)

【80年代前期】

【80年代中期】

【80年代後期】

【80年代後期〜90年代初頭】

【90年代初頭】

■各人の活躍の時系列に沿って、ブームの中での心理状況や経済的変化、人間関係の変化等についてインタビュー。共通して語られていることは、オーケンが”戦後の闇市状態”とうまく例えていたけれど、当時のブームの中、本人(バンド)、ファン、そしてビジネスサイドの人間が当時いかに【普通ではなかった】か、ということ。そして現在も各人がそれぞれのスタンス、それぞれのペースでちゃんとアーティストたり得ている、ということ。(いわゆる社会性があるかどうかは別として)

■印象に残ったどうでもいい部分のみ覚え書き。

森若香織

  • PCMの社長は無茶苦茶だった。
  • ソロアルバムのジャケットイラストを楳図かずお氏に依頼したら「いやです」と断られ、「代わりに好きな絵を選んでもらっていいですよ」ということで『おろち』になった。

キャニオン→BMGのレコード会社移籍のタイミングがセールス/露出度的に下降線となった吉田豪は”BMG移籍後の作品のほうが断然いいですよ!”とコメントしていたが、私もキャニオン時代しか聴いていなかったクチです。

氏神一番

  • 契約金やTBSのCM等で稼ぎ出したはずの大金は全く自分の懐に入っていない。
  • PCMの社長は天狗になっていた
  • 一発屋の代名詞となってしまったが、世の中にはその一発も当てられないバンドのほうがはるかに多い。

氏神氏についてはオーケンも過去のエッセイで多数ネタにしていたような。でもオーケンは今の氏神氏をリスペクトの対象としているそうだ。

阿部義晴

  • ユニコーンのみどりちゃんがEBIと結婚報道(恋愛報道?)された当時、彼女の家には脅迫が相次ぎドアポストには汚物が投げ込まれた。

氣志團がなぜあんなに売れたのかは今だ理解できないです。

いまみちともたか

  • 「再結成してほしい」という声に対しては”甘えるな!”

バービーボーイズとは本当に唯一無比の存在価値を持つバンドだった。二匹目のドジョウ的ヒットを狙って”ポスト××”というスタンスのバンドは数多くあれど、”ポストバービー”というバンドは今だ存在していないもの(多分)。

サンプラザ中野くん

  • 『RUNNNER』は去っていったほーじんのことを思い書いた曲(詩)。

これは知ってたけど、本人のコメントとして読むとまた感じるものが違うなぁ。

NAOKI

  • 野音のライブで亡くなったファンの女の子の葬儀の時、一生分くらいの涙を流した。その子のご両親が自分に対してとても優しかったこともつらかった。
  • LINDBERG山瀬まみに書いた曲が一番売れた。今でも印税が年間6〜7万入ってくる。

ラフィンにはあまり触ろうと思わなかったな。あえて言うならクリストファー・ドミヤンがVoだった頃が好き。(嘘)

【ケラ】

  • THE WILLARDのJUNとは仲が悪かった。”歌がヘタ”とライブのMCで言ったらJUNから怒りの電話がかかってきた。それに対して”自分はそういうキャラなんだから”とその場を収めた。ラフィンのチャーミーとは仲が良かった(同じくインディレーベルを運営する立場としての共感もあったのかもしれない。)
  • 有明PITのイベントでトリを努めたが、前のバンドがどんどん時間を押していって当初40分の予定が2曲しか演奏できなくなった。頭に来たので「この2曲で思い切り暴れてください!」と客を煽り、結果PITの客席は散々に破壊された。
  • たまのアルバムが2万枚売れ、メジャーのような中間搾取がない分無茶苦茶儲けた。その金で父親の墓を2000万で買った。
  • 麻生久美子はオダジョーの影響で空手バカボンのファン。オダジョーは空バカにギターで入りたいらしい。

過去に「宝島」で一人二役(自作自演、と言ったほうがよい?)で自分に対してインタビューしたり自作詞の評論したりで頭のよさがハナに付いてちょっと前までこの人のことは好きじゃなかった。しかし自身の時間と金を投げ打ってナゴム運営していたことの凄さに改めて気づかされて評価は変わりました。別に好きじゃないけど。

MAGUMI

  • ソロ活動をやらないのは、現ちゃんの作る曲も恭一の作る曲もどちらも好きだから。

彼の写真集が一冊うちにあります(相方所有)。

【ダイナマイト・トミー】

  • マリーはルックスだけでベースは弾けなかった。しかしピストルズのシドもそうだったから全然それで構わなかった。本当にいい相棒を亡くしてしまった。
  • これまで”破壊””暴動”をモットーにしてきた活動の結果、ライブでファンが死んでしまったことに対して苦悶している。

大槻ケンヂ

  • PCMの社長はバンドバブルの象徴だった。

本書ではPCMの社長がA級戦犯のような扱いです。

■本文中に登場するバンド名やレーベル名等の固有名詞には丁寧に脚注が付けられ*1、でも脚注を必要とするような世代がこの本を手に取るんかいな?という疑問も無くはない。
■本書では掲載が見送られたインタビューとして【森純太】と【TAIJI】の2つがある。前者はクオリティ上の問題で、後者は”今のバンドのことも中心に掲載してくれるのであれば”という申し出があったためらしい。【TAIJI】の壮絶な半生については別インタビューにもある程度掲載されている。

■自分がこの歳になって昔聴いていたバンドのアルバムを聴き帰したくなったり時系列順にアルバムを味わいたくなるのは、その音の中に各バンドの/その中の人の軌跡が刻まれているから。その時どきの彼らの輝きも悩みも悟りも、すべてバンドが生き物であることの証し。その証しを少しでも拾うことで自分も大きくなれますように。…ありきたりなまとめ方ですが。

*1:北斗の拳”にまで脚注が付いているのにはやりすぎだと思うけど