いろんなことにケリをつけようと思ったらダラダラと文章が長くなる

mm9姉さんもそうだけど、音楽を生活要素とする人の多くは、幼いころの音楽原体験としてテレビの特撮/アニメ番組のテーマ主題歌の脳裏への刷り込みというのが結構あるのではないか。プロのミュージシャンもしかりで、ファンキー末吉氏も昔のインタビューで”ガキの頃に見ていた「マジンガーZ」の主題歌のイントロのブラスが格好良く思ったのが音楽の原体験”みたいなことを言っていた記憶がある。
■自分が幼いころから”アニメ/特撮好き”だったという意識は特になく、サンライズのロボットアニメも八手三郎戦隊ものもごく普通に見ていたつもりだけど、ちょっと背伸びしたいお年頃の小学校高学年になるとそれまで購入していた雑誌が「小学○年生」から「アニメディア」になり、カセットテープとラジカセによるはじめての”エアチェック(なつかしー響きだ!)”の対象はアニメソングになった。兄貴のラジカセをこっそり使って、AMラジオの一般DJ番組の中でのアニメ主題歌リクエストコーナーを待ち構えて録音し、こっそりと聞いていた。時代は80年代中期、製作者側も”青年層が観るアニメ”を意識して主題歌にニューミュージック歌手/出身者を起用し始めたころである。判りやすい例で言うと杏里の「キャッツ・アイ」がヒットした頃だ。
■その後は購入雑誌が「アニメック」「ファンロード」へとシフトし、順調に言っていれば今ごろヲタ道まっしぐらだっただろうけど、中学に上がると普通の音楽を聴くようになって「GB」「バックステージパス」、更にロック嗜好(笑)が高まって「宝島」「バンドやろうぜ」にシフトし、エアチェックやCDレンタルをライフワークとせんばかりに80年代〜90年代のバンドブームを(所詮は片田舎の中学〜高校生の環境だったけどそれなりに)リアルタイムで体感してきた。
■しかし90年代も中期を過ぎ、生活環境が変わり(大学進学で九州の田舎の町から中核都市・広島に越したわけです)、映画を観ることが身近なものとなるとライフワークの対象は”音楽”から”映画”にシフトして行った。購入誌も映画雑誌となり、(一時は「キネマ旬報」「映画秘宝」「プレミア」の3誌を平行購読するという超・バランス感覚を誇っていた時期もあり*1)その一方で音楽についてはネット上で、それまで聴いていたアーティストの新譜情報を細々と入手する程度しか、音楽との関係維持は行っていなかった。
■そんな状態の中でふと脳裏に流れていた音楽はなぜか『ヤットデタマン』とか『逆転イッパツマン*2の主題歌…山本正之サウンドだった。なんだか懐かしくなってCDも借りてみたりした。

TWIN BEST タイムボカン 名曲の夕べ

TWIN BEST タイムボカン 名曲の夕べ

例えば典型的なポップス/ロックの楽曲は、導入のAメロ→展開のBメロ→サビのCメロの3部構成が基本で、そのバリエーションでCメロを冒頭に持ってくるとか、逆にAメロとBメロの2パーツだけで展開を組み立ててあとは勢いだけ、という曲もあったりする*3。しかし前述の山本サウンドは曲構成はAメロからEメロとかFメロくらいまであって、とにかく様々なメロディパーツを組み立てて、短い時間の中でぐいぐいとケレン味たっぷりに盛り上げていく凄さを改めて再確認したのですよ。あるいはその凄さを脳が覚えていて、テレビで耳にしていた頃から10年以上経ってから内部刺激として蘇らせた…というのは格好つけすぎか。とまぁ、これが10年以上前の話。

■で、今になってなんででこんな話かというと、先日ようつべをうろうろしていて出会ったのがこれ:

♪Springmercury氏による『逆転イッパツマン

なんですかこの教則ビデオのようなスラッピングは。特に間奏部分の高速ソロのかっこよさ。そして勿論、原曲がかっちょいい。上にも書いたけど、80年代以降、アニメ/特撮の主題歌はニューミュージック/ロックの色がどんどん濃くなっていくのだけど、結果人々の記憶に残るのは山本サウンドのような、ケレン味溢れる王道ソングのほうではないのかね。もともと子供ってのは飽き性だし目まぐるしく変わる展開に引き込まれていくものだ。ニューミュージック/ロック的な曲の構築方法、”はいここがAメロですよ” ”サビが聴きたい?今Bメロのいいとこだから我慢しなさい”的なもったいのついた曲ではテレビの前から離れてしまうし、何より子供が唄いにくい。子供が歌いたくなるようなアニメ/特撮の歌、あるいは童謡の共通点はメロディ同士/フレーズ同士の繋ぎ目が非常にスムーズであることだと思う。バックの楽器のフレーズが歌詞の間を埋めるようなロック的な構成の曲は唄っててもどこか白けるもんだ。
■曲そのものの話に戻すと、前作『ヤットデタマン』と並んで、スラップするベースラインといいホーンの使い方や女性コーラスの入れ方といい、十分にファンクなんですなぁ。自分の好きなファンク寄りの音のルーツが山本正之にあったことを再認識。

♪Springmercury氏による『宇宙刑事ギャバン

■特撮ファンおなじみの渡辺宙明サウンド。こちらはディスコ・ファンク。70年代の宙明サウンドの特徴である「ヘイヘイ」「オーオオー」といった合いの手が無くなったかわりにメリハリの効いたホーンフレーズが和田アキ子串田アキラの熱唱をサポート。それにつけても男の名曲。「俺もお前も名も無い花を踏みつけられない男になるのさ」という文句が素晴らしい。

♪Springmercury氏による『創聖のアクエリオン

■最近のアニメの主題歌がどんなトレンドにあるのかは知らない(つか興味ない)けど気持ちいいので1曲。
■アコースティックな音要素を歌い出しから導入まで少しずつ重ねていってリリカルなストリングスでぶわーとアオる、というパターンが最近のツボです。この曲もそうだったけど。

■だらだらと書きましたが、言いたいかったのは、新しいヤッターマンのオープニングはクソということです。

*1:キネ旬」単純に”つまらない”という理由で購読を打ち切り、「プレミア」は2回目の廃刊となり、今は「映画秘宝」一本です。ちゃんと100号通巻で読んでますよ。

*2:タイムボカン』シリーズは『オタスケマン』からリアルタイムで観ていた。でも格好つけたがりのスノビズムちゃんは後期のシリアス路線を好んで観ていたのでした。

*3:「ガガッデゴーイ!」の人たちの「♪ゆれてゆれて」とか(笑)