ぼくのかんがえたしーずん2

アルバム感想です。

シーズン2

シーズン2

  1. 心の折れたエンジェル
  2. ドナドナ
  3. 福耳の子供'08
  4. 踊る赤ちゃん人間
  5. 中学生からやり直せ!
  6. 人間嫌いの歌
  7. 世界中のラブソングが君を
  8. ロシアンルーレット・マイライフ
  9. プライド・オブ・アンダーグラウンド
  10. 蓮華畑
  11. ノーマンベイツ ’09
  12. 1000 年の監視者
  13. ゴッドアングル Part.2
  14. へそ天エリザベスカラー
  15. ツアーファイナル

勝手に曲追加+曲順変更してみました。俺様プレイリストです。

1.心の折れたエンジェル
伝統的鉄板HR。かっこいー。「やっちゃおーか」の部分の裏声コーラス部分が気持ちいい。
『タチムカウ('97)』的プロテストソングだけど、弱き者を【天使】としてオーケンが肯定している立ち位置が他の曲(8とか)にも共通してる。
イントロの歌に入る直前のゴリゴリのギターリフのところでオーケンが手をひらひらさせるアクションが好きだ。

2.ドナドナ
かっこいいんだけどねー。『新人』の『トリフィド〜』がどうしても頭に浮かんでしまって。
AメロでパッパコパッパコしてBメロでパカランパカランと加速して、ソロ部分では爆走する馬車馬のリズムが、「♪走りださないで〜」というオーケンの懇願といい対比になってます。

3.福耳の子供'08 4.踊る赤ちゃん人間
『福耳〜』を『大公式2』から勝手に入れました。だってそうでもしないと現メンバーでのあの名演奏が埋もれてしまいますからな。なおかつ、この2曲を並べることで、福耳の子供の誕生秘話が語られて、単体だと不気味な『福耳〜』が少しコミカルに感じられるようになるロザリア様式(←しつこい)。『〜赤ちゃん人間』はオリジナルからはあまり変わった印象なし。最後の「ホンギャー!」にオーケンの魂の叫びが感じられます(笑)

5.中学生からやり直せ! 6.人間嫌いの歌
4の「ホンギャー!」に間髪いれずオーケンのタイトルコールで始まる5の流れもなかなかいいですよ。この曲もこのままだと埋もれてしまうので入れました。この2曲の並びはもう言わずもがなですね。るみねさんによるタワレコイベントの記事を読んでからもう中学時代のオーケンとウッチーの姿しか浮かばなくなった(笑)。
『中学生から〜』はオーケン和田アキ子ばりの「ハッ!!」というシャウト&ソウル唱法がかっこいいと思うよ。『人間嫌い〜』は後半の追っかけコーラスがライブで楽しそうだな。オーケンが「君以外の!」って言ってウッチーが「俺以外の!」って返せばいいのに(笑)

7.ロシアンルーレット・マイライフ 8.プライド・オブ・アンダーグラウンド
頭の中でこの2曲をうまく分離して整理できないです。8で「アンダーグランウンド アンダーワールド アーバンギャールド♪」と歌ったあとに7のAメロにつながってしまう(苦笑)。しかも下手すると「アンダーグラウンド サーチライ♪」と歌いかねん。
『プライド・オブ・アンダーグラウンド』、タイトルどおり筋少リスナーへの応援歌ですね。本人たちも(凍結期間はあったにせよ)40歳まで続けてこれたからこそ歌えるわけだけど、リスナーも”「筋少好き!”で部屋の中でヘッドホンで聴いて終わるんじゃなくて何かを始めることが大事なんだよね*1

9.世界中のラブソングが君を
いい曲だけど、正しく認識しなくちゃいけないのは、【ラブソングのソング】ではあっても【ラブソング】ではない、ということ。例えば結婚式で新郎が(友人代表でもいいんだけど)この歌を花嫁に歌ったとしてもこの曲オンリーだったら花嫁はポカーンですよ。「え、本編は?」って。だからこの曲は1コーラス程度をさらりと歌ったあとに、本命のラブソングをしっかりと歌うべき。
ライブだったらこの歌で♪ラララーラーラーとコーラスで〆た直後、「大好きだよ〜!」とオーケンが間髪いれずシャウトして『僕の歌を総て君にやる('96)』に続く構成だったら、…失禁するかも。

10.蓮華畑
中盤の「どうして若い人は先も見ないで走れるの/どうして大人たちは先が見えても止まるの」というフレーズがじんと来ます。「この島の中でならどこまでも走れるさ(『孤島の鬼('85)』」とはまた違う、”自由”の意味を問う40歳のオーケン

11.ノーマンベイツ'09 12.1000年の監視者
『ノーマン〜』はノイジーなギターが絡むことでピアノのフレーズの緊張感が引き立ちます。『1000年〜』はハードなロボットアニメの主題歌に似合いそう。というはこの動画によるインプリンティングですが。

この2曲の流れ(の素晴らしさ)については先の日記に書いたので割愛。

13.ゴッドアングル Part2 14.へそ天エリザベスカラー 15.ツアーファイナル
曲順を変えました。【監視者の視点】→【神の視点】と流れたほうがスムーズですし、『へそ天〜』の盛り上がりが『ゴッドアングル』でトーンダウンして『ツアーファイナル』でまた盛り上がるのもせわしないので。
『ツアーファイナル』はBメロのギターのスピード感と、ピアノが次第に絡んできてサビでぐわーと盛り上がる高揚感がすごく好き。あと、「まだ愛してたら〜♪」の後に入る「えっ?」という女声コーラスもツボだ。

*1:るみねさんのアンケートの「筋少を聴いて何か始めたことは?」という問いはまさにそのことなんだと今思った

ツアー

東京2デイズのセットリストが各所で公開されていますが、2日とも参加する人に配慮したのか、結構違いますね。
1日目のアンコールの某曲には驚いた。【オーケンの好きなもの+自虐女子+ヒネクレポップ】の佳作だと思ってます。

追申:その某曲を口ずさもうと思ったらどうしても『抜け忍』になってしまう。

ぜっさんヘビロテちぅ

昨日は業務時間の半分は車移動だったのでフルボリュームで4回は堪能したよ!
ただCDが聴ける社用車が空いてなかったので、圧縮した音源をカーコネクティングパックでカセットデッキにつないで聴いていたのは誰かさんには内緒だよ!

シーズン2

シーズン2

SONY カーコネクティングパック ポータブルMD/CD用 CPA-8

SONY カーコネクティングパック ポータブルMD/CD用 CPA-8

全体の感想を一言で言えば【安心感】。言霊使いの超・個性的なボーカリストと、磐石な演奏陣と、21世紀の現在では既に古典的といえる王道の曲構成で、【走・攻・守】が揃ったアルバム。
一曲ごとの感想を書いて早いとこすっきりしたいけど時間がかかりそうなので次の機会にしますが、『ノーマンベイツ'09』〜『1000年の監視者』は聴くたびにイマジネーションが膨らみます。『仏陀L』を聴いた時の『ノーマン-』は詞の情景がいまひとつ把握できなかったのだけど、『ノーマン−』に登場する【僕】の隠された過去を語るのが『1000年−』だと考えれば謎が解けた!って感じ。
恋人を殺めた罪の意識に苛まれた男が逃げ込んだ先が【森の中】、つまり内的逃避。同じフレーズを繰り返すピアノのように平穏に繰り返される、彼女と紅茶を飲みながら過ごす日々。そこに差し込むノイズのようなギターの激しいフレーズは、彼の現実逃避を許さない追っ手による追跡の予兆。そのカギを握る猫のケムリ、その正体は…とそんな自己解釈を、繰り返し聴くたびに膨らませています。ちなみに【弓と矢】は『望みあるとしても』のインドラの矢にも関係しているのであった。(さらに妄想)

↑のように、二つの曲を並べて前の曲の背景を後の曲で語る方式を「ロザリア様式」と名付けよう。(←勝手に決めるな)

WEDNESDAY J☆POP 観たよ

J-POP界で唯一無二のロック・バンドが生出演!
完全復活から2作目のアルバム「シーズン2」を発表する日、
圧巻のライブ・パフォーマンスでふれあいホールに新たな伝説を生み出します!
(番組公式サイトより)

  • MC寺岡呼人曰く「20年間同じレコード会社だけど、話したのはトータルで5分くらい」…多少誇張はあると思うけど。会社が同じと言っても、デスク並べて仕事してるわけではないからね。純太と和弥は『ボヨヨンロック』に参加してるし、もう少し交流はあると思うのですが。そういえば先週の『週間アスキー』の「R40!」は和弥がゲストだった。
  • 呼び込みにてメンバー登場。ライブ観覧者は当然全員筋少ファンだ(と思う)けど、全体的に反応は落ち着いた感じ。ファンの特性と年齢層からか、本当のライブのようにハジケた感じではなくてa little shyな感じか。
  • バンドのこれまでの歩みをコンパクトにしたVTR紹介。先日の武道館ライブ、デビュー時の『釈迦』のPVから始まって、紆余曲折の長い歴史のある個性的バンドですよーということが短時間で過不足なく素人/ファン含め全方位的に目配せされたよいVTRだったと思う。
  • ライブ前トークの座り位置は前にオーケン・橘高、その後ろにおいちゃん・うっちー。呼人の「再結成した後の”鮮度”は今どうですか?」という質問(フリ)に、「普段ぜんぜん会わないから新鮮だよね」「(一緒に食事はしないけど)互いの食生活の話はするよね」、オーケンから橘高さんに「”君はラーメン食べすぎる!”とか」その返しで橘高さんからオーケンに「”君は食生活が健康すぎる!”とか」 という流れが面白くもあり、微笑ましかった。
  • ライブ開始前の煽りMCからすでにオーケン、噛み噛み。でもそれもあわせて”普段通り”で、ファン側もリラックスしたのではないでしょうか。新曲『心の折れたエンジェル』でスタート。あれ?エディがいませんよ?ドラムの兄ちゃんは誰ですか? …生放送のテレビショー仕様で【オケデータのあてぶり演奏+オーケンの生唄】だったのだけど、筋少に関しては【メンバーの生演奏+オーケンの口パク】のほうがいいのではないの?オケ演奏に合せてアクションするメンバーを見ながら盛り上がるのはファンとはいえ客席も少しやりにくそうだったし、何よりオーケンの歌詞まつがいが…オーケンの足元に歌詞ディスプレイ画面はあるのだけどライブっぽさを出そうとすると凝視するわけにも行かず、歌番組を見ていて歌詞テロップを無情と思ったのは今回が初めてです。でもバンドブームの頃からこんな場面(オケ演奏による歌番組出演)はもう何度もメンバーは経験しているのだろうね。
  • 『〜エンジェル』直後のオーケンMCで早速、歌詞まつがいが自虐的ネタに。「…次の歌は古い歌だから大丈夫だろー!コール&レスポンスで行くぜー、”日本を印度に!”(”しーてしまえー!”)」で『日本印度化計画』。オケのスタートがコンマ数秒遅くてギターリフのタイミング合せがちょっと苦しかった橘高さん。シタールソロの部分できちんとエアフィンガープレイを見せてくれるその後ろのパーカッションの音に合せてベースのボディをポコポコ叩くうっちー。その直後のギターソロの横でオーケンの蛍光ヌンチャクソロ。曲エンディングのコール&レスポンスも決めて、そのまま『イワンのばか(Ver.2007)』へ。Aメロの低音ボーカル部分もオケになっており、オーケンの歌詞まつがいがまたしても浮き彫りにされる状態に!しかしそこは曲の勢いで押し切る!最後のコーラスでは客席も一体化して合唱&ウェーブ。かっこよかった。
  • 最後は新曲『世界中のラブソングが君に』でしっとり。オーケンもさすがに歌詞まつがいはイカンと思いさりげなくモニターに目をやりながら歌い上げてまさに披露宴のカラオケ状態
  • 番組のエンディングで、「ライブではオーケンを誰も紹介してくれないのでメンバーからかっこいい紹介をお願いします」という視聴者からのリクエストに、じゃぁ…と橘高さんが、「ボーカル、生放送に強い男、大槻ケンヂ」ときれいに落として全員大うけ。オーケンも笑いながら「20年やっててこれだかからね〜、もう”神”だよね!」とコメントし、なごやかに番組終了。本番のミステイクを逆手に最後をきちんと〆た橘高さんGJ!と思いつつ、先の食生活のやりとりと合せてのオーケンと橘高さんのフロントツートップのバランスが美しいなぁと思った。
  • 上には書かなかったけれど、新曲の感想はちゃんと『シーズン2』を聴いてからにします。

『アナーキー』@横川シネマ!!

アナーキー [DVD]

アナーキー [DVD]

 暇があれば”80年代の日本のロックお遍路参り”を行っている自分だけれども、その中でも重要な札所であるはずの「アナーキー」にはこれまでどうも足が向かなかった。youtubeで彼らの曲を聴いてみたのだが、ガナリたてる茂のボーカルとガシャガシャしたバックの音が、「センス悪っ!」と好きになれなかったのである。
それでも、彼らについて理解しておきたいことが二つあった。
「当時社会現象にまでなった彼らの人気とは何だったのか」 ということ、そして、
「彼らの活動を停止させた【マリの事件】とは何だったのか」ということ。
 そのいずれの答えも、この映画では判り易く描かれていた。そして何より、この映画を観て、彼らの残した音源を全て聴きたくなった。

 映画は彼らのデビューから約5年間の過去の映像資料をベースに、現在のメンバーひとりひとりからの当時についてのコメント+当時の彼らに影響を受け現在第一線で活躍するミュージシャンたちからのコメントを挿入する形式となっている。中学・高校で顔なじみだった近所の不良たち5人が「パンクでもやるか」と結成したアナーキーは、アマチュアからのたたき上げではなくヤマハ主催のコンテスト”EastWest”での受賞をきっかけにメジャーデビューを果たし、1980年のデビューアルバム『アナーキー』は10万枚を越えるヒットとなる。
 80年代前半に全国区で人気を得たパンクバンドとして”ザ・スターリン”、”ARB”、そして”アナーキー”を御三家(笑)として挙げていいのではないだろうか。ただし、3つのバンドの表現手法やファン層はそれぞれ大きく異なっていた。
 まず過激なステージングと独特の歌詞で注目を浴びた”ザ・スターリン”は、主催者である遠藤ミチロウが表現手法のひとつとしてパンクというスタイルを選んで始めたバンドであり、反体制や反社会性をテーマにしたものではなかった。ステージでの放尿や豚の生首を客席に投げつけるといった過激なステージングから、ファン層も過激なパンクスタイルの若者が多かったが、当のミチロウ本人は、それらのステージングや独特の歌詞は”ライブに来た人間の本音や感情を引き出すため”という、言わば前衛芸術的なスタンスでザ・スターリンの活動を行っていた。(…と思う。ミチロウに触れ始めたのはこの2年くらいのことなので少し自信がない(笑)。)
 ARBをパンクバンドとして扱うことは少し抵抗があるが、彼らがロックファンから支持を得はじめた80年初頭の叩き付けるようなビートとエネルギッシュなボーカルというスタイルはパンクロックのそれと重なる部分が大きい。歌詞の内容も労働者階級の不満や悲哀を主なテーマにしながらも石橋凌の独特のセンスによって女性や社会人等の幅広い層のファンを獲得していった。(…この解釈には自信あるよ。再結成後からのファンだけど10年目のARB-Kidsとしての思いは誰にも負けん!)
 そしてアナーキーであるが、デビュー当時のファッションやヘアスタイル、顔つきは本当に”当時の不良5人組”といった感じで、歌詞の内容も「ふざけんな」「やめちまえ」とフラストレーションをレトリックで隠すことなくストレートに表現している。”センスが無い””頭が悪い”と言い切ってしまうとそれまでだけれど、同じような不満を持った中学生・高校生の年代に対しての訴求力は充分だった。そしてバンドとしての演奏も、この映画で初めてきちんと認識したのだけど【上手い】。デビュー前からデビュー後しばらくの間もメンバーの5人は同じ屋根の下で生活していたというが、5人のパワーのベクトルとスピードが呼応しあって強靭なビートを生み出しており、【荒い】けれど【上手い】。ボーカル/歌詞の持つパワーと演奏のパワーは、アナーキーの”親衛隊”と呼ばれる熱烈な若いファン層を誕生させ、彼らはバンドの象徴であったナッパ服と「亜無亜危異」と書かれた赤い腕章というファッションで相互の連帯感を強めていった。亜無亜危異という当て字のセンスから判るように、アナーキーのファン層は暴走族とイメージがダブる。暴走族が自分の居場所をバイクとスピードに託すような”純粋さ”で、親衛隊たちは自分たちの欲求の解消をバンドの活躍に重ねていった。


 アナーキーのメンバーの中で彼ら親衛隊と最もコミュニケーションを行っていたとされるのが、サイドギターの逸見泰成、通称【マリ】である。吉田豪のインタビュー集『バンドライフ』におけるシゲルへのインタビューによると、彼はもともとの素行が地味で真面目だったものの、シゲルに感化されるかたちで不良への道を進んでいったという。家庭や学校では大人しいとされている子供が心の底では不満を抱えており、仲間との出会いの中でそれらが吐き出され、自分らしさを見出していく─想像ではあるけれど、そんな道を辿ったマリ自身が、親衛隊の若者たちに最も共感していたのかもしれない。

 デビュー当時は自分たちと大人・社会との軋轢を歌うことがバンドのテーマであり推進力であったアナーキーであるが、作品の発表を重ねていく中で、ミュージシャンとしての表現力の向上や音楽性の拡大が次第にバンドとしてのテーマとなっていく。映画の中で少しだけ映った80年代中頃の彼らは、(ファッションこそ”ポジパンのコスプレをしたおっさん達”という、正直DQNな感じなのだけど)リズム隊の強化がバンドの音にしなやかさと強靭さを与えたような印象が垣間見えた。このような流れは他の多くのバンドにも同様に起こることであり、バンドの成長を理解できないファンにとっては「裏切られた」「つまらなくなった」という、【先に進むことを選んだ者】と【スタート時の初期衝動を忘れられない者】という意識のズレを与えることも多い。そしてアナーキーの場合、その成長がバンド内部でのズレに発展してしまう。


 「各人がレベルアップを意識して、バンド内での役割分担が進んで行く中で、マリの居場所が無くなっていった」
映画の中でメンバーはそれぞれ、当時のことを異口同音にそう語る。伏し目がちに、そして辛そうに。

 映画の中でのマリの姿や口調は他のメンバーよりも若々しく雄弁に映る。それはまるでバンドを推進するメンバーというより、バンドを崇拝する熱烈なファンのような純粋さを感じさせる。バンドが次の姿を目指して試行錯誤していく中で、かつては普段の行動も5人一緒に「修学旅行のように」つるんで行動していたメンバーたちも個人での活動が多くなっていき、その中でマリは孤立していくようになったという。
 そして1986年、マリは酒がからんだ場面で、前妻が他の男といる姿を見て、刃物で彼女を刺してしまう。重傷を負わせたマリは、殺人未遂として逮捕される。

 この【マリの事件】はロックファンの間では暗黙知として扱われている事件だけれど、単に「○○が○○を刺した」という現象レベルで流布していたに過ぎず、なぜそうなったのか、という背景(上記が全ての背景ではないとしても)までが明らかにされたのはこの映画が始めてではないかと思う。

 
 新たな方向性を模索していた他のメンバーは別名の「THE ROCK BAND」─パンクバンドではない、ただのロックバンドとして活動を持続させようとするが、やがてその活動も失速していく。バンド「アナーキー」はその後数回の、マリを含むイベント的な再結成やメンバーチェンジを経て、現在も独自のペースで活躍中でおり、物語はまだ続いている。


 マリに刺された彼女は、その著書の中でこう語っている。
「裁判所で被告と原告として対峙したとき、彼に対する憎しみは無かった。ただ、そんな形で会わなければいけないことが悲しかった。」
 彼女はこの事件での経験を『Dear Friends』という歌にした。そして彼女もまた歌い続け、彼女のバンドは結成25年を迎えた。その物語もまたいずれ。

BAND LIFE―バンドマン20人の音楽人生劇場独白インタビュー集

BAND LIFE―バンドマン20人の音楽人生劇場独白インタビュー集

アナーキーBOX「内祝」(DVD付)

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筋少ファンに薦めてみたい映画セレクト

筋少曲やオーケンソロ曲を聴くようになってその世界観から連想した映画を数本セレクトしてみました。
といっても『真夜中のカウボーイ』とか『イージーライダー』とか安易な連想ではないですよ。実はその2本は観たことないのでセレクトできない、ということもありますが。
別ブログのほうにありますので、関心のある方はぜひ。→m-vie@m-nn.org